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急成長中の日本ワイン 礎を築いた先駆者たちの挑戦日本ワイン 140年の真価(5/5 ページ)

日本で本格的なワイン造りが始まってから140年。いまや急成長を続ける「日本ワイン」はいかにして生まれ、発展してきたのだろうか。先人たちの苦闘と挑戦の歴史を追った。

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シャトー・メルシャンのワイナリー
シャトー・メルシャンのワイナリー

 浅井氏のもう1つの功績が、「シュール・リー」製法の普及である。これは辛口の白ワインに適用されるフランスの伝統的な手法で、醸造後に澱(おり)を取り除かず、そのままワインを数カ月貯蔵するというもの。通常であれば発酵が終わった白ワインは、澱が沈むとすぐに上澄みをすくい取って別のタンクに移動させるが、あえて澱とワインを一緒にさせるシュール・リー製法は、酵母が風味を出し、味わいの厚い辛口に仕上げることができるのだという。

 この製法を導入し、83年に初めて甲州種に適用、実用化したメルシャンは、85年にはこの企業秘密とも言える製法を勝沼の他のワイナリーに惜しみなく公開した。それは日本ワインをもっと活性化したいという浅井氏の信念によるところが大きかった。その後、他社でもこの製法を用いてワイン造りを行うことで、今では「甲州のシュール・リー」と言えば、甲州種の辛口ワインの代名詞になっているのだ。

 そしてまた、日本のワイン文化発展のために人生を捧げた浅井氏の尽力が、勝沼をはじめ各地のワイナリーでもレベルの高いワインを製造できるようになったといっても過言ではないだろう。この浅井氏の意志は今もなお後輩の造り手たちに受け継がれているのだ。(次回に続く

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