「経営」と「人事」に距離がある企業は成長が難しい理由:“いま”が分かるビジネス塾(1/4 ページ)
「HRテック」――近年このキーワードを耳にする機会が増えている。人材関連分野は、「人がやる仕事」という一般的なイメージとは異なり、AIなどの新しいテクノロジーとの親和性が高い。各企業が人事のデジタル化を急ぐ背景や、導入の課題などについて考察した。
〜人財を見つける・育てる「HR Tech最前線」〜:
人事における採用・配置・評価・管理といった業務をテクノロジーで最適化する「HR Tech」が加速している。HR Techは人事業務をどう変革し、そして企業の成長にどう寄与するのだろうか。本特集では先進企業の事例を紹介し、HR Techの“いま”をお伝えする。
HRテックは、HRM(Human Resource Management:人材マネジメント)とテクノロジーを合わせた造語であり、ITを使って人材関連業務をデジタル化する一連の仕組みのことを指す。金融とテクノロジーを組み合わせたフィンテックと同じ文脈と考えればよいだろう。
人材業務におけるIT化の歴史は意外と古く、工場の労務管理やアルバイト社員の勤怠管理などの分野ではかなり前からシステム化が進められてきた。
だが最近、HRテックというキーワードが注目されるようになったのは、AI(人工知能)技術の進展と無関係ではないだろう。AIを使って、より踏み込んだ分析を行うことで、単なる労務管理のレベルではなく、もう少し次元の高い人材マネジメントを実現しようというのがHRテックの狙いである。
特に日本の場合、高齢化と人口減少によって、あらゆる業界で人手不足が深刻化している。新卒採用に苦慮しているのはもちろんのこと、中堅以上の社員についても、人材と業務のミスマッチが発生しており、社内の人材を最適化できていない。
こうした状況を背景に、日本におけるHRテックは、従来型の勤怠管理に加え、採用と人事評価の分野を中心に普及が進んでいる。
HRテックの導入で最初に期待されるのは、人材マネジメント業務そのものの効率化である。人事部門の社員を増やすことなく、より多くの案件に対応できるよう業務を自動化するというものだ。
だがHRテックの普及はこのレベルにとどまるものではない。近い将来、AI技術の進歩に伴って「次の段階」に進む。それは単なる業務効率化ではなく、システムがより能動的に人材業務を行う形態である。人による業務では想像もしなかった成果が得られる可能性があり、HRテックを導入する本当の意義はここにある。
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