「経営」と「人事」に距離がある企業は成長が難しい理由:“いま”が分かるビジネス塾(2/4 ページ)
「HRテック」――近年このキーワードを耳にする機会が増えている。人材関連分野は、「人がやる仕事」という一般的なイメージとは異なり、AIなどの新しいテクノロジーとの親和性が高い。各企業が人事のデジタル化を急ぐ背景や、導入の課題などについて考察した。
人事部門を「雑用」から解放する
企業のHRテック活用の事例としては、ソフトバンクのAI採用が有名である。同社は新卒の採用業務に米IBMの「Watson」(ワトソン)を導入しており、応募者から寄せられたエントリーシートの採点にAIを用いている。ワトソンにエントリーシートを読み込ませ、合格だった場合にはそのまま通過させ、不合格だった場合には、採用担当者が確認した上で合否を判定する。
同社の狙いはあくまでも採用業務の効率化であって、AIで人を判断することではない。有名企業の人事部門には大量のエントリーシートが寄せられるが、明らかに求める人材と合致しないケースも多く、こうしたエントリーシートを振り分ける作業はかなりの手間となっていた。振り分けという「単純作業」をAIに任せることで、採用担当者は面接や、相手を口説く(入社の動機付け)業務に専念することができる。
また、システム化を進めることで採用後の検証も容易になる。これまでは採用した人材が、どのように企業に貢献したのか、あるいは採用基準が適切だったのか――こうした検証はあまり行われてこなかった。一連の業務をシステム化することができれば、いわゆるPDCAサイクルの確立も容易になるだろう。
人材サービスのビズリーチは、前述したような総合的な人材管理サービスの提供を始めており、日立製作所やNECといったITベンダー各社も関連のITソリューションを積極的に提案するようになってきた。同じく人材企業のパーソルホールディングスでは、社員のデータを蓄積することで退職予測に生かしたり、社員をどこに異動させると活躍できるのかが分かる異動シミュレーションにも取り組んでいる。
当面はこうしたテクノロジーの活用によって人事業務の生産性を高めていくフェーズが続くことになる。
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