「経営」と「人事」に距離がある企業は成長が難しい理由:“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)
「HRテック」――近年このキーワードを耳にする機会が増えている。人材関連分野は、「人がやる仕事」という一般的なイメージとは異なり、AIなどの新しいテクノロジーとの親和性が高い。各企業が人事のデジタル化を急ぐ背景や、導入の課題などについて考察した。
単なる効率化にとどまらない
だがHRテックの普及がこのレベルでとどまっているわけではない。もっと能動的にAIを活用することで、人材マネジメントそのものの概念を変える新しいフェーズがやってくる。
既にグローバル企業の一部では、さらに踏み込んだ形でのAI採用が実施されている。日用品大手のユニリーバでは、2017年6月以降、AIで応募者を評価する取り組みを加速させている。エントリーシートの選考を廃止し、応募者には12種類のオンラインゲームに取り組んでもらい、集中力、記憶力、性格、考え方などを多角的に判定する。
会社とのマッチング度が高いと評価された応募者はその後、与えられたテーマに対する解答を動画で送信する「デジタル面接」を経て、ようやく対面での面接にたどり着く。
システムの詳細は不明だが、採用後のパフォーマンスなどの情報がAIにフィードバックされ、適性試験のアルゴリズムが動的に変化するようになる(結果に応じて常に最適化される)のは時間の問題だろう。ここまでくると、既存社員の人事評価や、異動の意思決定など、より重要な局面においてもAIの知見が生かせるようになってくる。場合によっては、従来の基準では想像もしなかった人材をAIが推薦してくることになるかもしれない。
ここで重要になるのが、全社的な人事がどのようなメカニズムで動くのかという組織戦略的な視点である。経営学の分野には「組織は戦略に従う」という有名な一節があるが、組織戦略は経営戦略そのものであり、ここにAIが入ってくるということは、経営の意思決定にAIが関与してくることを意味している。
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