「定年後に1億円」は本当に必要なのか:定年バカ(1/4 ページ)
フィナンシャルプランナーなどが講師を務めるセミナーで「定年後に1億円は必要です」といったセリフを聞いたことがある。「1億円」という数字を聞いてびっくりした人も多いかもしれないが、本当に1億円も必要なのだろうか。
一番心配なのに、一番どうにもならないのが、お金である。そこを押して、なんとかならないものかな。おあつらえむきに、奥村彰太郎氏(ファイナンシャルプランナー)の『定年後のお金の不安を解決する本』(知的生き方文庫、2014)という本がある。そうか「お金の不安を解決」してくれるのか、そんな不安ならしこたまあるよ、と思って読んでみたが、ふふ、やはりそんなうまい話、あるはずがないのである。
ただ、年金の得なもらい方とか、保険の選び方とか、ローンの繰り上げ返済とか、葬儀費用の節約の仕方とか、どんな本にでも書いているようなことが書かれているだけである。当然ながら現在の貯蓄が倍になる方法とか、そういうことはない。
「年金でどう生活していくかを考えることが、お金の不安を解消する第一歩」ということで、「年金をもらいながら働く」方法とか、年金で足りない部分は働くかなにかして補わなければならない、などと書かれているが、みんなすでに、誰からいわれなくてもやっていることばかりである。
最後に、奥村氏はけっこう図々しいことをいっている。「みなさんのお金の不安は解決したでしょうか? 人によって、お金の状況はまちまちですから、さまざまなご意見があることでしょう」。そんなに意見がないから、あなたの本を読んでみたのだが、「預貯金が足りないのであれば、確定拠出年金やNISAなど非課税の金融商品の利用を考えみる」「何か不安のもとをつかめば、対応策はいくらでもあるのです」と、素っ気ない態度。そしてついには、こんなおざなりのお言葉だ。「定年までの残り時間を、どう使うか――その時間を上手に使うことこそが、お金の不安を解決する近道です」
弱ったね。元々、「お金の不安を解決する」という惹句にひっかかった私が浅はかだったのである。まあ本当のことをいえば、そんなに「不安」があったわけではない。
「定年後いくら必要か」のテーマを書く上で、「不安」のフリをしていただけで、実際は、ないお金はない、と開き直っているのが実情である。いったん不安に襲われたら、それを取り除くことはけっこう難しい。
最初から無駄な不安にとりつかれないこと、それが一番である。これは決しておざなりではない。
気を取り直して、次にいってみよう。定年後の生活には一体どれくらいの資金が必要なのか。そのへんのことを書いた本を開いてみる。いっとくけど、ないものはないからね、とあらかじめ次の著者に断っておいて読み始める。
関連記事
- カプセルホテルに似たホテルが、地方を再生させるかもしれない
カプセルホテルのようで、カプセルホテルでない。そんな宿泊施設が全国で増えているのをご存じだろうか。その名は「ファーストキャビン」。全店の平均稼働率が90%を超えているホテルは、どのような特徴があるのか。 - 大人になったら使わないのに、なぜ私たちは「分数」を学ぶのか
社会人になって「微分・積分や二次関数」を使ったことがある人は少ないはず。いや、ひょっとしたら、小学校の低学年で学ぶ「分数の足し算」も使ったことがないのでは。大人になっても使わないのに、なぜ私たちは「分数」を学んできたのか。その理由は……。 - 「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
女優・石原さとみさんの眉がどんどん細くなっている。彼女のファンからは「そんなのどーでもいいことでしょ」といった声が飛んできそうだが、筆者の窪田さんは「日本経済にとって深刻な事態」という。なぜなら……。 - 「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界
訪日観光客の間で「着物」がブームとなっている。売り上げが低迷している着物業界にとっては千載一遇かもしれないが、浮かれていられない「不都合な真実」があるのではないだろうか。それは……。 - サラリーマンの味方「切腹最中」は、なぜ1日に7000個も売れるのか
お詫びの手土産として、多くのサラリーマンが購入する「切腹最中(せっぷくもなか)」をご存じだろうか。1990年に発売したところ、当初は注目されていなかったが、いまでは多い日に7000個以上売れている。「切腹」という言葉が入っているのに、なぜヒット商品に成長したのか。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.