「定年後に1億円」は本当に必要なのか:定年バカ(3/4 ページ)
フィナンシャルプランナーなどが講師を務めるセミナーで「定年後に1億円は必要です」といったセリフを聞いたことがある。「1億円」という数字を聞いてびっくりした人も多いかもしれないが、本当に1億円も必要なのだろうか。
退職金や年金の「平均額」を知っても意味がない
厚生年金にしても、在職中の収入(標準報酬月額)によって、受取額に差がある。厚労省が2017年3月に発表した厚生年金の平均月額は、男で16万6120円、女は10万2131円である。私自身の年金の月額を発表しておこう。月額は13万5940円で(介護料を取られるようになって前より減った)、男平均からは月3万円も低い(ついでにいっておくと、夫婦合わせた年金額は2カ月で約43万900円、月に直すと約21万5000円である)。
私の年金額は平均に比べて月3万円も低い、と書いたが、愚痴っているのではない。ただの事実である。お金の問題になると退職金にしても年金にしても、必ず世間の平均額が出てくる。あれは一体なんのための数字か。一応気になって見てしまうのは人情だが、その結果、私の退職金は平均額を圧倒的に下回り、年金でも平均に及ばない。だからといって、なにがどうなるわけでもない。世間の平均額など知ったところで、なんの役にも立たないのである。
まさか、自分の退職金や年金が平均より上だと知ってほくそ笑んだり、下だと知って焦ったりする人はいないだろうが、もしそういう人がいるなら愚かなことである。世間に勝っているぞ、とか、世間に負けてるのか、と思ったところで、実情はビクともしないからである。それに上ならまだしも、下だと知って、お金がないうえに、気持ちまでが落ち込んだり、焦ったりしてしまっては、元も子もないのである。
先の『図解 定年までに知らないとヤバイお金の話』によれば、厚労省のモデルケースは夫の年収が576万円として、夫婦の合計の年金月額は23万円となっている。しかし「国が示しているこのモデルの年金を超えられるのは少数派と考えられる」。つまり「年金だけで老後生活していく」のは「どう考えても不可能です」。いや、不可能かどうかを決めるのはあなた(岡崎さん)ではない。もしも他に収入がなければ、不可能であろうとなかろうと、年金でやっていくしかないのである(住居費さえなければ、なんとかいけるのではないか)。足りなければ働くか、なけなしの貯金を崩すかして補うしかない。
年金は何歳からもらうか、という細かい問題もある。厚生年金の繰り上げ支給で、60歳からもらうと、65歳からもらう満額の70%しかもらえない。「76歳8カ月以上長生きすると65歳からもらった方が得になる」のは分かった上で、私はすぐ収入があったほうがいいのと、65歳以上生きられる自信がなかったから(健康に問題があったわけではない)、迷うことなく60歳からもらった。とっくに65歳は超えてしまったが、後悔はない。要するに損得ではない。
わが町でも「豊かな老後のための年金セミナー」(「終活セミナー エンディングノート講座」などもある)というものが開かれているようだが、なにが「豊かな老後のため」だと思い、行かない。それなりに盛況なのだろうか。
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