愛媛の小さな町に野外レストランは何をもたらすか?:古き街並み残る内子町(3/4 ページ)
愛媛には古き良き街並みが残る小さな町がある。松山市内から南に40キロほど行った場所にある内子町だ。ここで2晩だけのイベントが開かれた。“幻の野外レストラン”と呼ばれるDINING OUTである。
地方にクリエーションのきっかけを!
シェフとしてかかわった高田氏はどのような感想を抱いたのだろうか。今回のDINING OUTで内子町に初めて訪れた高田氏の最初の印象は「田舎らしい田舎」。自らも奄美大島出身で、その原体験があるからだろう。
内子町近辺はフルーツが豊富な一方で、そのほかの食材集めにはそれなりの苦労があったそうだ。しかし、実際の調理現場で高田氏に影響を受けて地元のスタッフがピンセットを使った盛り付け作業を行ったり、商品化する料理に対してさまざまな意見が出たりする様子を見て、高田氏は満足感を覚えたそうだ。
「僕らはあくまでアドバイスをする役割にすぎません。これから先につなげていくのは地元の人たち。彼ら自身が主体性を持つことで責任感も生まれるし、具体的な目標もできます。もし自分たちで商品化したメニューが売れれば、これからの若い人たちの夢にもなります。そうしたことで内子町が活性化すれば嬉しいですね」と高田氏は話す。
その言葉には地方に共通する問題があるからだという。高田氏は「うちの田舎(奄美大島)には若い人が少ないし、何かを創ろうともしていません。クリエーションは田舎を活性化するために重要。アイデアはいくらでも目の前にあるのに、それをおカネにする方法が分からないという地方は多いでしょう。そのやり方が分かれば、自分たちできっと創り出すようになるのです」と力を込める。
別の視点からカー氏も地方課題について言及。今、地方に必要なのは新しい産業だという。これまでは工場誘致や企業誘致が積極的に行われていたが、そういう時代は終わった。そうした中で観光産業は多くの地方に可能性があるとする。
ただし、大型バスで次々に人を連れてくるような、数だけを追いかけたやり方ではなく、少人数の観光客でもいいので長期滞在してもらう仕組みが重要だという。これは良い商売になるし、それにかかわる雇用も生まれる機会がある。
実際、フランスのプロヴァンス地方や、イタリアのトスカーナ地方は、日本の地方に負けないくらい過疎であるにもかかわらず、観光というコンテンツをうまく使って経済基盤を強くしている。「内子町の景観はしっかり整備されていて、他の地方の町に比べて有利な立場にあることは間違いありません。いろいろとうまくやれば将来への道はきっと開けます」とカー氏は強調した。
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