「ゲリラ・ジャーナリスト」が日本に上陸する日:世界を読み解くニュース・サロン(3/5 ページ)
米国で「ゲリラ・ジャーナリスト」が話題になっていることをご存じだろうか。ジャーナリストの手法とは呼べない無茶苦茶なやり方で、大手メディアの記者などを標的にして、トンデモな映像を公開している。もしゲリラ・ジャーナリストが日本に上陸したら……。
オキーフの支持者は少なくない
すべてがバレてしまったのにもかかわらず、オキーフは次のような声明を出した。
「親愛なるプロジェクト・ベリタスのサポーターの皆さま。今朝、私がオフィスに向かっていたら、ワシントンポストの記者とカメラマンに直撃取材されました。彼らは何を求めているのか。ワシントンポストに潜入していた私たちの調査報道ジャーナリストの素性がバレてしまったのです。こうしたことは潜入取材では起きることで、過去にも起き、今後も起きるでしょう。しかし良い知らせもあります。私たちはすでにこれを記事にできる材料を手にしています」
そして、最後にこう締めくくった。「私たちの調査報道を完成させるために手助けをしていただけませんか?」
そもそも潜入取材とも言えないその取材方法の問題点には触れず、最悪の状況からさらに寄付を募る――。もはや詐欺師のようなレベルだといっても過言ではない。
もっとひどい手法も明らかにされている。10年には若い保守活動家の取材をしていた米CNNの女性記者に対し、オキーフは取材に応じると誘い出し、ボートに連れ込んで大人のおもちゃなどを並べて口説こうとした。そしてその様子や発言をビデオに収めて、公表しようとしたのだ。しかしその直前に、記者が公表計画を知り、ことなきを得た。
こう見ると、オキーフはろくでもない自称ゲリラ・ジャーナリストだが、実は支持者も少なくない。事実、オキーフの“信者”は着実に増えているようで、彼が設立したプロジェクト・ベリタスは、年々、寄付金が増加。16年には480万ドルの資金を集め、オキーフ自身はそこから年間31万7000ドルの給料を手にしている。NPOのわりにはかなり高額な報酬だと言えよう。
ここまで書いたような異常な“取材”を常にしているなら、単なる「迷惑な変人」で終わりそうなものだが、オキーフは過去にいくつかの「実績」を残している。だからこそ今も寄付金が集まっているのだろう。
その実績のひとつは、左派系の民間団体を潰したことだ。09年、貧困層を援助する援助団体の共同社会組織即時改革協会(ACORN)の職員に、女性スタッフとオキーフは売春婦とその彼氏を装い、未成年者を使った売春や人身売買、脱税する方法を質問、職員がそれに答える様子をビデオに隠し撮りした。
そしてそれを公表したことで大騒動になり、バラク・オバマ大統領も過去に顧問を務めたACORNは一気に寄付金を減らし、さらに政府からの補助金も議会で中止させられてしまう。だが後の調査で、オキーフは映像を改ざんしたほか、悪意ある編集をしていたことが判明。ACORNに非がなかったことが明らかになったものの、ミソがついたことでACORNは解散に追い込まれた。
オキーフはこの件で名を売り、保守派からの支持を増やしたという。
関連記事
- ボイコット危機の平昌五輪で韓国が恐れる本当の“敵”とは
2018年2月に韓国で開催される平昌五輪に不参加国が出る可能性が報じられた。深刻化する北朝鮮情勢が大きな懸念となっているが、五輪を巡る問題はそれだけではない。 - 核シェルターが売れているのに、なぜ業者は憂うつなのか
北朝鮮が6度目の核実験を実施した。自分の身を守るために「核シェルター」の販売数が伸びているそうだが、業者からは困惑の声も。どういうことかというと……。 - 北朝鮮が攻撃できない、米国も攻撃できない背景
北朝鮮が攻撃してくるかもしれない――。何度もミサイル実験を繰り返されると、多くの人がこのような不安を感じるかもしれない。では、米国政府はミサイル問題をどのようにとらえているのか。実は……。 - 実は怖い、インド便のトイレ
航空会社のトラブルが相次いでいる。男性が警察に引きずり出されたり、母親がベビーカーを奪われたり。いずれも米国の航空会社で起きたわけだが、客室乗務員によると「インド便で深刻な問題がある」という。どういうことかというと……。 - 金正男だけでない!? 殺人工作のリアル
金正日総書記の長男である金正男が、女性2人に襲われて暗殺される事件があった。この事件は大きく報じられているが、実は世界を見渡せば、国家が絡んでいるとされる秘密工作は少なくない。例えば……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.