「ゲリラ・ジャーナリスト」が日本に上陸する日:世界を読み解くニュース・サロン(4/5 ページ)
米国で「ゲリラ・ジャーナリスト」が話題になっていることをご存じだろうか。ジャーナリストの手法とは呼べない無茶苦茶なやり方で、大手メディアの記者などを標的にして、トンデモな映像を公開している。もしゲリラ・ジャーナリストが日本に上陸したら……。
メディアやリベラルをおとしめようとする動き
16年の米大統領選でも、民主党の関係者を標的にし、トランプ陣営の集会で荒らし行為をする人をわざと送り込んできたと暴露する様子を隠し撮りし、公表して話題になったことがある。また、CNNのプロデューサーが、CNNがトランプ大統領のロシア疑惑を報じるのは「視聴率のため」と発言した様子をビデオに収めて公表したケースをはじめ、何人かのCNNスタッフから、だまし討ちのコメントを取った。これに対してCNNは、「どんな意見でも個人スタッフの考えは自由で歓迎する」と答えている。
こうしたメディアやリベラルをおとしめようとする動きを評価してか、トランプ大統領は選挙戦当時オキーフに1万ドルを寄付している。一方で、10年には、民主党議員の事務所に不当に立ち入ったとして逮捕されてたこともある。この逮捕歴によって、冒頭で触れたように、いくつかの州がプロジェクト・ベリタスの資金集めを禁じる動きを見せているのである。
ここでひとつはっきりさせておきたいのは、オキーフの手法はメディアがよくやる突撃取材とは違うことだ。なぜなら、嘘で相手をおびき寄せ、だましながら失言を引き出そうとしているからだ。さらに言うと、捏造(ねつぞう)に近い編集も少なくないし、左派とメディアを狙い撃ちにしているのも偏向と言っていい。
もっとも支持者にはそんな事実は関係ないのかもしれない。学習や記憶の研究で知られる米ワシントン大学セントルイス校の著名な心理学者ヘンリー・ローディガー教授はこんなことを指摘している。「間違いだったニュースが、驚くようなものだったり、興味深いものだった場合には、その後に間違いが訂正されても、訂正された情報よりも間違った情報を覚えてしまうこともある」と。確かに、最初のセンセーショナルな報道の印象を覆すのは容易ではない。
関連記事
- ボイコット危機の平昌五輪で韓国が恐れる本当の“敵”とは
2018年2月に韓国で開催される平昌五輪に不参加国が出る可能性が報じられた。深刻化する北朝鮮情勢が大きな懸念となっているが、五輪を巡る問題はそれだけではない。 - 核シェルターが売れているのに、なぜ業者は憂うつなのか
北朝鮮が6度目の核実験を実施した。自分の身を守るために「核シェルター」の販売数が伸びているそうだが、業者からは困惑の声も。どういうことかというと……。 - 北朝鮮が攻撃できない、米国も攻撃できない背景
北朝鮮が攻撃してくるかもしれない――。何度もミサイル実験を繰り返されると、多くの人がこのような不安を感じるかもしれない。では、米国政府はミサイル問題をどのようにとらえているのか。実は……。 - 実は怖い、インド便のトイレ
航空会社のトラブルが相次いでいる。男性が警察に引きずり出されたり、母親がベビーカーを奪われたり。いずれも米国の航空会社で起きたわけだが、客室乗務員によると「インド便で深刻な問題がある」という。どういうことかというと……。 - 金正男だけでない!? 殺人工作のリアル
金正日総書記の長男である金正男が、女性2人に襲われて暗殺される事件があった。この事件は大きく報じられているが、実は世界を見渡せば、国家が絡んでいるとされる秘密工作は少なくない。例えば……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.