AIによる家電制御 “標準仕様”を握る企業はどこだ:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
国内でもAIスピーカーの販売が始まったことで、AIで家電をコントロールするという話が実用段階に入ってきた。だが、この分野は標準規格が確立しておらず状況は混沌としている。
家庭内の情報収集には一定のコンセンサスも必要
IFTTTはGoogle Homeにも対応しているので、Google Homeに話しかけると、登録された別のアプリケーションを間接的に動かすことができる。動作させるアプリケーションの中にスマート家電があれば、その家電をGoogle Homeでコントロールすることもできるわけだ。
ちなみにイッツ・コミュニケーションズが提供している家電制御システムは、このIFTTTを活用したものである。もしIFTTTのようなサービスが標準となった場合には、全ての製品がIFTTTにだけに対応すればよいので、製品の選択範囲が大きく広がることになる。
ただ、IFTTTのようなサービスが標準となるのかは現時点では何ともいえない。その理由は、家電制御に関する情報は喉から手が出るほど欲しいものであり、各社がデータを囲い込もうとする可能性が高いからである。
クラウドを使った家電制御のシステムでは、製品の稼働情報が全て事業者のサーバに送られることになる。これらの情報は事業者にとって宝の山といってよい。どんな製品をいつ稼働させているのかが分かれば、利用者の生活情報をかなり詳細に把握できる。GoogleやAmazonが家電制御の仕組みをAIスピーカーに取り入れたのは、家庭内の情報を分析するためである。
レオパレス21の賃貸住宅のようなケースでは、事業者側が居住者の動きをある程度、把握できるので、得られた情報を、さまざまな付帯サービスに活用できる。こうした情報は事業者が独占しておきたいと考える傾向が強く、独自の仕様にこだわるところも増えてくるだろう。
ただし、単純なスイッチ情報とはいえ、生活に密着したデータを事業者に管理されるのはあまりいい気分ではない。得られた情報をどう保護をどうするのかについても、社会的コンセンサスを得ていく必要があるだろう。AIによる家電制御の分野はポテンシャルも大きいだけに、最終的にどのような仕様で落ち着くのか、まだまだ紆余曲折がありそうだ。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
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