EVスポーツカーに挑むエンジニアが追い求める“失敗”:ゼロからのモノづくり(2/4 ページ)
EVスポーツカーの開発で注目されるGLM。ベンチャーでありながら量産車開発を実現した同社の技術力の要が、技術本部長の藤墳裕次さんだ。藤墳さんのモノづくりへの思いと“失敗”を重ねた開発について聞いた。
壁だらけのEV開発
当時のGLMは、高い壁にぶつかっていた。ガソリン車のトミーカイラZZを改造する方法で開発したEVは、「ただ走るだけ」のおもちゃのような出来。商品としての魅力はなく、量産には程遠い状態だった。
「ガソリン車にはワクワクドキドキするような加速感があり、とがったクルマでした。EVにしたらもっと面白くなるはずが、実際は加速感が乏しく、電気で走るゴーカートみたいだった。トミーカイラZZに対して、悪いことをした気になるほどでした」
藤墳さんを仲間に加えたGLMは、大きな方向転換を決断する。ガソリン車を改造するのではなく、一から設計しなおすことにしたのだ。「いばらの道だが、それしかない」。お金も人も場所も足りない中、5人で文字通りゼロからのEV開発をスタートさせた。
ゼロからのEV開発には、部品を供給してくれる取引先が必要だ。メーカーを回り、自分たちが実現しようとしているクルマづくりを説明するものの、相手にされない。「話を聞いてくれても、返事が来ない。電話も取ってもらえない。やろうとしていることを信じてもらえませんでした」
その状況が少しずつ変わってきたきっかけは、メーカーの担当者を実際に開発現場に招いて話をする機会を作ったことだ。フレームだけの状態でも、車の構造や形は分かる。担当者にそれを見せながら、実現したいことを説明した。すると、モノづくりに対する思いを共有できたと感じる経験が増えてきた。共感してくれた担当者が「何とかしたるわ」と意気込み、会社を説得してくれたこともあった。
「部品メーカーで働く、クルマづくりが好きな人たちの中には、『常に大手メーカーの方を見ながら仕事をしないといけない』ことに思うところがある人も多い。そういった人たちが心を動かしてくれたのだと思います」
徐々に興味を持ってくれる人が増え、1社ずつ付き合う会社が増えていった。ブレーキやランプ、バッテリー、金属加工などのメーカー20〜30社とともに本格的な開発をスタート。現在の取引先は170社以上にまで増えた。
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