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EVスポーツカーに挑むエンジニアが追い求める“失敗”ゼロからのモノづくり(3/4 ページ)

EVスポーツカーの開発で注目されるGLM。ベンチャーでありながら量産車開発を実現した同社の技術力の要が、技術本部長の藤墳裕次さんだ。藤墳さんのモノづくりへの思いと“失敗”を重ねた開発について聞いた。

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ワクワクする“走り”を求めて

 トミーカイラZZにとっては、スポーツカーの加速感、ワクワクするような走りを実現することが最も重要。エアコンやオーディオといった要素はいらない。そのためにカギとなるのが、動力を生み出すモーターだ。「スポーツカーの走りに見合った、馬力のあるモーター」を探し回った。

 しかし、性能が高いモーターがあっても、それを搭載して車を動かすだけでいいわけではない。適切にシステム制御して、効率よく加速できなければ、スポーツカーとはいえない。とにかく何度も試作を重ねた。うまく走れるかどうかは、やってみないと分からないからだ。「作ってやってみる、という地味な活動の繰り返し。何百回とクルマを走らせました」

 試行錯誤の結果、藤墳さんらは感動の瞬間に立ち会うことになる。「アクセルを踏んだら、すごい勢いでぶっ飛んでいくような加速感」があるクルマがついにできたのだ。ガソリン車を改造したEVとは全く違っていた。「EVってこんなにすごいのか。これは面白くなる、とワクワクしました」

 最終的に、発進から3.9秒で時速100キロに到達できるという、多くのガソリン車のスポーツカーを上回る加速性能を実現した。また、部品をできるだけ安く仕入れながら軽量化にも成功。総重量は軽自動車より軽い850キロだ。「とにかく“走り”が良ければいい。とがらせるところだけ磨く」。それを貫いたことで、理想の走りを実現した。

 しかし、それで終わりではない。最終目標である量産にはまだ遠い。量産するためには、安定した品質を保つことはもちろん、試験に通って認可を受けないといけない。この「試験」が高い壁だった。

 大手自動車メーカーなら、自社でテストコースを持っている。そこでなら、定められた基準を満たす試験ができる。GLMにそのような試験場はない。試験をやらせてくれる場所を探すことから始めなければならなかった。

 しかし、自動車の新規参入メーカーなどこれまでほとんどなかった。テストコースを持っているメーカーに頼んでも、「場所を貸す」ということ自体想定されていない。貸す方もいくらで貸せばいいのか分からない。なかなか進まなかった。世界中で試験場を探し、メーカーに無理やり頼み込む。それを繰り返し、14年に認証を取得した。

 そこからさらに1年かけて、トミーカイラZZを量産化。現在も専用工場で月数台のペースで製造し、予約者に届けている。

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