ヒットを生み出すには何が必要なのか V字回復した会社の“熱”:川上徹也さんに聞く(2/3 ページ)
「お客さんの数がどんどん減っていて、困っている」といった悩みを抱えている人が多い。人気、売り上げがどんどん落ち込んでいくところがある一方で、どこかで底を打ち、そこから上昇していくところもある。いわゆるV字回復できた会社とそうでない会社にどのような違いがあるのだろうか。
外国人観光客にうけて活気を取り戻した「黒門市場」
川上: 商店街でも同様です。シャッター通りになっているところが多いですが、中には盛り上がっている商店街もあります。そのひとつが大阪にある「黒門市場」です。ミナミの繁華街にある飲食店に食材を供給し続けただけでなく、地元庶民にも愛されてきました。ただ、景気低迷などの影響を受け、お客さんが減って寂れてきていまた。
そうした状況に対しどのような手を打ったのかというと、「外国人観光客」に目をつけたんです。近くのホテルに宿泊している外国人観光客に来てもらえば、商店街が活気づくかもしれない。しかしいくら観光客が増えても見学されるだけなら売り上げにつながらない。ちゃんと消費してもらわないと。
そこで何をしたのかというと、「黒門市場全体を巨大なフードコート」にしたんですよね。店先にテーブルを出したり、店内で飲食できるスペースを新設したりして、外国人観光客を増やすようにハード面を整備しました。また、食べ歩きができるように、食べ物を串に刺して売る店を増やしました。一般的に食べ歩きといえば、和菓子やフルーツなどをカットする店が多いのですが、黒門市場は違う。魚介類の店が多いこともあって、マグロのトロをその場で切って刺身として食べることができたり、ウニをその場で割ってスプーンで味わうことができたり、フグのてっさ(刺身)を注文することができたり。
価格は決して安くはないのですが、市場にあるモノは何でもその場で味わうことができるという仕組みが、外国人観光客にものすごくウケています。私も土曜日の昼に行ったところ、ものすごく混んでいまして、ラッシュ時の通勤電車のなかを歩いているような感じでした。
当初、外国人観光客がやって来ても売り上げが伸びない店があるのではといった懸念もあったそうなのですが、実際に運営してみると、意外なモノが売れることが分かってきました。例えば、靴下。「市場に来て、わざわざ靴下を買うの?」と思われたかもしれませんが、「日本製」をアピールすることで、よく売れているそうです。このほかに、日本茶、高級イチゴ、常備薬なども人気で、商店街全体に活気が戻ってきました。
行列: 商店街の中で、黒門市場は数少ない成功事例のひとつだと思うのですが、うまくいっているところとそうでないところでどのような違いがあるのでしょうか。
川上: かつての活気を取り戻すために、多くの商店街がさまざまな手を打っています。イベントを開催したり、ポスターを工夫したり、広告を打ったりして。ただ、残念ながら成果につながっているところは少ないのが現状です。一時的に話題になり、その時は人が増えたとしても継続してお客さんが来ない。リピーターになってくれないのです。
リピーターが増えない理由のひとつに、“店がおもしろくない”ことが挙げられるのではないでしょうか。イベントやポスターなどを見てちょっと面白そうだなと思って商店街に行っても、ワクワクしない。買いたいモノがない。近所に住んでいて「醤油が必要だから」「洗剤がなくなりそうだから」といった理由で、やって来る人にとってはいいのですが、わざわざ遠方から足を運んできた人は店が面白くなければ、「また行こうか」とはなかなかならないですよね。その点、黒門市場はその場で食べられるということをウリにして成功しました。
アイデアによって多くの人に足を運んでもらうこと。アイデアによってさまざまな体験をしてもらうこと。この2つがうまくつながらないと、地域や店を活性化させることは難しい。では、この2つをつなげるために何をすればいいのか。失敗を恐れずに、まず何か「面白そうなこと」を始める。その上で、PDCAサイクルを何度も回さなければいけません。うまくいかなかったらその要因を考えてカイゼンする。そしてさらにアイデアをだし、すぐに実行する。そしてさらにカイゼンする。
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