ヒットを生み出すには何が必要なのか V字回復した会社の“熱”:川上徹也さんに聞く(3/3 ページ)
「お客さんの数がどんどん減っていて、困っている」といった悩みを抱えている人が多い。人気、売り上げがどんどん落ち込んでいくところがある一方で、どこかで底を打ち、そこから上昇していくところもある。いわゆるV字回復できた会社とそうでない会社にどのような違いがあるのだろうか。
イケてる魚たちのイケてるセリフでおもてなし?
川上: 話は変わりますが、「イケボ」という言葉をご存じでしょうか。「イケボ」とは、「イケメンボイス」の略……つまりカッコイイ声という意味。東京にある水族館「アクアパーク品川」は、そのイケボにちなんだイベントを企画して、ネット上などで話題になりました。その名は「イケ魚パラダイス」(2017年7月8日から10月1日まで)。
Webサイトを見ると、『イケてる魚たちのイケてるセリフで、あなたをおもてなし。館内に設置された「魚の声が聴けちゃうよシステム」で、昼、夜、そして雨の日と、バリエーション豊かなイケてるセリフの数々がお楽しみいただけます。人気声優陣が彩る、都会の海のパラダイスで、イケ魚との甘?い時間を過ごしてみませんか』と書いています。
水槽の横にタブレット端末があって、画面上のボタンを押すと音声が流れる。例えば、チンアナゴの場合、「首をながーくして、待っている」、カクレクマノミの場合、「あの、その、僕のイソギンチャクになってください」と言っているんですよね。いずれもプロの声優さんが担当しているのですが、この企画は館内で見ることができる魚に付加価値を持たせたことが大きい。
アクアパーク品川は立地がいいですし、人気コンテンツもたくさんあります。ただ、魚にあまり興味がない人にどうやったら来てもらえるのかといった課題があったのかもしれません。何も工夫をしなければ、そこから何も生まれませんが、イケ魚をつくりだしたことで「週末、水族館に行ってみようか」と思った人がいるのではないでしょうか。そして現地に行ってみて「面白かった」と思ってもらえれば、リピーターになってもらえる可能性が生まれます。
忘れてはいけないのが、人の熱量。自分たちの商品をどうやってアピールすればいいのか。関係者の間でそうした熱がなければ、消費者にはなかなか伝わりません。まずは何でもいいので、「熱」を生み出すことが大切です。
川上徹也:
コピーライター。湘南ストーリーブラランディング研究所代表。大手広告代理店を経て独立。ACC賞、広告電通賞など、受賞歴多数。「物語で売る」という方法を体系化、「ストーリーブランディング」という言葉を生み出したことで知られる。
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