韓国の米国大使がいつまでも就任しない理由とは:世界を読み解くニュース・サロン(3/4 ページ)
トランプ大統領が新政権を発足させてから1年が過ぎた。たくさんの問題を抱えているなかで、政府機関の要職が「空き」だらけであることも忘れてはいけない。なぜ、いまだに重要なポストに人が配置されていないのか。
トランプ政権、組織として機能していない
このニュースは、他人事ではない日本でも報じられた。しかも米メディアによれば、米政府は駐韓米国大使としてチャ氏の名前を韓国政府にも伝え、韓国政府はそれを了承したとも伝えられていた。
しかし、である。それ以降、米国でもチャ氏の任命・就任がその後どうなっているのかは聞こえてこない。大使として承認されるために必要となる米議会での公聴会が行われる気配もないし、韓国への問い合わせの後には沈黙が続いているという。しかも韓国に対しても、チャ氏の就任動向について何ら連絡がないらしい。
その理由は何なのか。ひとつには、米国内の重要ポストを埋められないのと同じで、トランプ政権が組織として機能しておらず、政権内の事務的な無能さが背景にあるとの見方がある。大使を就任させるまでのプロセスを迅速に行うことがままならないとの指摘だ。
その背景には、トランプが側近にすら悪態をつくことで、政権内で職員の士気が低下していることもある。つまりトランプの言動のせいで、職員たちのやる気が削がれているというのである。確かに、ツイートなどによる数々の暴言だけでなく、身内の米国連大使についても「簡単に首をすげ替えられる」と言ってみたり、側近を「オレの手下だ」と言ってみたり、ホワイトハウスでも人を小馬鹿にするような発言を繰り返していると報じられている。離職者が多いのもそうしたトランプの言動のせいだという声もある。
さらに、トランプ政権は国務省の職員を3分の1に縮小すると標榜しており、職員らのやる気が下がっているともいう。
駐韓米大使に話を戻せば、長期の大使不在に心が穏やかでないのは韓国だ。ただでさえ北朝鮮の核ミサイル開発問題や、中国が絡む最新鋭迎撃システム「THAAD(終末高高度防衛ミサイル)」配備問題など、文在寅(ムン・ジェイン)大統領とトランプ政権の関係がギクシャクするなかで、大使のような存在がいないのは韓国政権に不利に働いているとの見方もあるからだ。また米国から軽視されているという悲観的な声もある。
韓国紙の中には、「平昌オリンピックのタイミングでチャ氏が就任する」という希望的観測を報じているところもあるが、その根拠は分からない。
韓国政府はおそらくチャ氏を警戒しているはずだ。なぜなら文大統領の北朝鮮との対話路線に対して、チャ氏は北朝鮮に対して強硬な姿勢であるからだ。さらに中国に対しては、中国が北朝鮮の核ミサイル開発が進展している原因となっていると厳しく指摘する。かつて、「中国は、米国の東アジアにおける信用と信頼、弾性を失わせようとし、自分たちの存在感と巨大さ、さらにたくさんの金を持っているという事実で米国に取って代わろうとしている」と発言しているくらいだ。
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