果たして8Kは普及するのか? 国内電機メーカーに温度差:積極派のシャープに対し……(5/5 ページ)
8Kの実用放送が2018年12月1日からスタート。年内には8Kが一般家庭でも視聴できる環境が整うというわけだ。だが、8Kに対する国内電機メーカー各社の足並みはそろっていない。年初に米国・ラスベガスで開催された「CES 2018」でも垣間見られた。
だが、ソニーは、8Kの業務領域への提案は先行させたい意向だ。
「かつてのアナログ時代に、ハイビジョンで撮影したコンテンツを4:3のアナログ放送で配信していた時期があった。これと同じように、コンテンツを制作する側は、今から8Kでコンテンツを作っておき、実際にユーザーに届ける際には、HDや4Kで配信し、将来的に8Kが本格化したとき、8Kで届ける準備ができるようになる。制作する側は新たな技術を先取りするべき。これは、ユーザーに対して今8Kをどう届けるのかは別の問題である」とコメントする。
放送機器事業においても多くの実績を持つソニーは、8Kには放送機器の分野で先行させたいという思惑があると言える。
ただ、ソニーの平井社長は、「8Kが本格化する時期については、なかなか明確には言えない」とし、「8Kで撮影したコンテンツも増やさなくてはならないし、チップセットの性能も上げていく必要がある。また、8Kコンテンツをどう配信するのかも課題」とする。
8Kの実用放送が始まっても、8Kブームが到来するには、電機メーカー各社の足並みがそろう必要がある。それにはまだ時間がかかりそうだ。
著者プロフィール
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
関連記事
- 更地になったシャープ旧本社に何を思う
大阪市阿倍野区のシャープ旧本社が更地の状態に。当初の計画では、8月31日までには解体工事が完了する予定であったが、工事は前倒しで進んでいるようだ。この光景に嘆きの声も。 - いつもと違うぞ!? 年末商戦でエプソンが見せた「新手」
セイコーエプソンは、2017年の年末商戦で、プリンタのインクカートリッジモデルの主力製品に関するテレビCMを一切行わなかった。そのわけというのは……。 - 富士通が島根でロボット生産に踏み切った理由
富士通のPC生産子会社の島根富士通が、ロボットの生産に乗り出した。PC製造で培ったノウハウなどを生かすことで、新たな事業として立ち上げ、今後のビジネス成長のドライバーにしたい考えだ。 - 鴻海からの“心遣い”を、シャープはどう受けとめたのか
台湾の鴻海によるシャープ買収決定後に開かれた共同会見において、鴻海・郭会長兼CEOはシャープのイノベーターとしての歴史をべた褒め。ところが、両社の経営に対する基本姿勢はまるで異なるものなのである。 - エプソン、国内プリンタ事業拡大へ大勝負
セイコーエプソンおよびエプソン販売が、大容量インクタンクを搭載した新製品を投入する。初の日本市場専用モデルということで、同社にとっては国内プリンタ事業の転換に大きな一歩を踏み出すものになるはずだ。 - 日本の産業を死守! シャープ幹部が明かすJDIと協業の狙い
シャープは、経営再建中のジャパンディスプレイ(JDI)に対し、ディスプレイ事業における協業を申し入れていることを明らかにした。シャープの上席常務でディスプレイデバイスカンパニー社長の桶谷大亥氏がその狙いを語った。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.