「仮想通貨はバブルなのか」という議論は不毛だ:“いま”が分かるビジネス塾(3/4 ページ)
現時点において仮想通貨がバブルかどうかを判断するのはナンセンスだと思っている。むしろ仮想通貨に今後、どのような利用形態があり得るのか(またはないのか)について議論した方が建設的だろう。
中央銀行が仮想通貨を発行する可能性
このところ、中央銀行がブロックチェーンを使った仮想通貨を発行すれば、ビットコインなど既存の仮想通貨は駆逐されてしまうという議論を目にする機会が増えた。中央銀行にとって仮想通貨が厄介で好ましくない存在であることは事実だが、この話も少しポイントがズレている。
仮想通貨は「電子的な貨幣」といった部分だけに着目されているわけではなく、むしろ、政府による一元管理を必要としない点が重要視されている。従って中央銀行が紙の紙幣に代わってブロックチェーンの貨幣を発行したところで、ビットコインをはじめとする無国籍通貨との関係は変わらない。
そもそも中央銀行は現段階において、紙の紙幣はほとんど発行していない。ここ数年、日銀の量的緩和策で日銀当座預金には300兆円を超える資金が積み上がっているが、これは全て電子的な振り込みである。ブロックチェーンという低コストな新技術を使っていないだけで、中央銀行が発行する通貨のほとんどは電子的だ。
中央銀行が全ての通貨をブロックチェーン化し、銀行を通さずに直接管理することも原理的には不可能ではないだろう。経済学の分野におけるマネタリズムを主張する人にとっては大喜びかもしれないが、銀行を使って間接的に金融をコントロールする現行制度は中央銀行にとって居心地がよい。ここから大きく踏み出すとなると、かなりの紆余曲折(うよきょくせつ)が予想される。
貨幣というのは、多くの人が通用価値があると判断すれば、貨幣として流通する性質を持っている。ビットコインと中央銀行の関係について議論するに当たっては、政府の管理下にない通貨がどの程度、流通できるのかという部分に論点を絞った方がよいだろう。
関連記事
- 仮想通貨で資金調達 投資家をどう守る?
国内外で盛り上がりを見せるICOだが、一方で投資側にはリスクもある。中国や韓国はICOの利用を禁止することを発表したが、日本は規制については“様子見”の状況だ。 - 「AIアナウンサー」年間1000円の衝撃
エフエム和歌山が「ナナコ」と名付けたAIアナウンサーの運用を始めている。年間で掛かる費用は1000円程度だという。さまざまなAI機能が安価で簡単に買える時代、ビジネスの現場では何が起こるのか。 - 起業家にベーシック・インカム 岩手県遠野市が実験導入
Next Commonsと岩手県遠野市は、起業家に対して「遠野市に住民票を移すこと」などを条件に3年間のベーシック・インカムを導入するプロジェクトを始める。 - セブンの「ロイヤリティ引き下げ」が意味するもの
セブン−イレブンが、これまで「聖域」としてきたフランチャイズ(FC)加盟店のロイヤリティ引き下げを表明。コンビニにとって核心部分であるロイヤリティの見直しを実施しなければならないほど、セブンは追い込まれつつあるのかもしれない。 - 「営業」の仕事はAIでどう変わるのか
AIの普及によって営業の仕事が大きく変わろうとしている。10年後の社会においてセールスパーソンに求められる能力や評価基準は今とはまったく違ったものになっているはずだ。AI時代に営業のプロとして生き残っていくために必要なスキルとは……。 - 自分の価値を取引する「VALU」の存在価値は?
自分の価値を取引するという新しい概念を提唱した新サービス「VALU(バリュー)」。既に自身を“上場”した人は1万人を超えているそうだが、VALUとはどのようなサービスで、どのような可能性があるのか。改めて整理してみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.