参加者殺到、「コンプライアンス落語」とはどんなもの?:笑いながら学ぶ(4/4 ページ)
コンプライアンスに関わる事件は日常茶飯事のように起きている。だが、これを社内に徹底しようとしても、難しい用語が多かったり、法律に照らし合わせる必要があったりしてハードルが高い。これを分かりやすくしようと作られたのが「コンプライアンス落語」だ。
かつては伝説のマニュアルを制作
今回のつつみ隠しの口演では、17年12月5日午前中から参加者の募集を開始したところ、当日午後5時には、70人の定員が埋まってしまうという人気ぶりだった。「次回の新作披露は、18年夏ごろの予定」(ハイテクノロジーコミュニケーションズ企画推進室の大豆生田由華氏)という。
企業からの要望に対応して、同社は「コンプライアンス落語動画」の映像DVDの販売を開始。コンプライアンス落語を視聴後に、復習するためのeラーニング用コンテンツをセットにして、社内でも効果的な学習ができるようにした。この映像コンテンツは一度購入すれば、社内のポータルサイトに自由にアップすることができ、無期限で社員が共有できる。価格は1話12万円(税別)。そのほか、実際に、コンプライアンス落語を落語家が目の前で直接演じるサービスも用意しているという。
実は、ハイテクノロジーコミュニケーションズは、1984年に発売された日本初となるアップルのマニュアル本「はじめてのあっぷる」(キヤノンマーケティングジャパン発行)を制作した会社としても知られる。当時は大きな話題を呼び、PCを買わない人も買い求めたという逸話が残る、伝説のマニュアルだ。同社ではそれ以来、ユーザー視点での分かりやすいマニュアル作りによって成長を遂げてきた経緯がある。
同社は12年からコンプライアンスに関する事業を本格的に開始しており、ここで使われるドキュメントや映像などのコンプライアンス意識啓発コンテンツのすべてが、「分かりやすく」「親しみやすい」という観点から制作したものである。いわば、マニュアル制作のノウハウを生かし、利用者の立場から作り上げるのが同社の強みであり、「コンプライアンス落語」もその観点から作られたコンテンツの1つというわけだ。
利用者目線でサービスを提供するハイテクノロジーコミュニケーションズの社内にはさまざまなアイデアが生まれる風土がある。落語というようなユニークなコンテンツが生まれたのも、こうした企業風土が背景にあることが見逃せないと言えよう。コンプライアンスを企業に広めるために、今後、どんなコンテンツが生まれるのかも楽しみだ。
著者プロフィール
大河原克行(おおかわら かつゆき)
1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、25年以上にわたり、IT産業、電機業界を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、Web媒体などで活躍。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、AVWatch、クラウドWatch、家電Watch(以上、インプレス)、日経トレンディネット(日経BP社)、ASCII.jp(KADOKAWA)、ZDNet(朝日インタラクティブ)などで連載記事を執筆。夕刊フジでは「まだまだスゴい家電の世界」、中日新聞では「デジモノがたり」を連載中。著書に、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(KADOKAWA)、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「図解 ビッグデータ早わかり」(KADOKAWA)などがある。近著は、「究め極めた『省・小・精』が未来を拓く――技術で驚きと感動をつくるエプソンブランド40年のあゆみ」(ダイヤモンド社)。
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