資金調達の「常識」が変わろうとしている:財務特集スタート(2/5 ページ)
資金調達を巡るパラダイムシフトが起きている。背景にあるのは、金融とITを結び付ける新しいテクノロジーの台頭である。資本は経済の原動力であり、その流れが変わるということは、ビジネスの仕組みそのもにも影響が及ぶ。新しい資金調達の手法やその可能性、そしてリスクについてまとめた。
実質的には株式による資金調達に近い
増資でも融資でもないと聞くと、それだけで混乱してしまう人も多いかもしれないが、このような問題は形式ではなく実質で理解することが重要である。
通常、企業がエクイティファイナンスを実施する場合には、新規に株式を発行し、投資家がこれを引き受けることで資金を会社に提供する。株式を引き受けた投資家に対しては、経営に参画する権利(議決権)や配当を受け取る権利などが付与される。また資金調達を行った企業が成功して株価が上昇すれば、投資家は株式を売却して利益を得ることもできる。
ICOも基本的にはこれと同じである。プロジェクトを計画している企業やグループが、「トークン」と呼ばれるデジタルの権利証を発行し、これを引き受けた投資家がビットコインなどの仮想通貨を払い込む。
トークンにはサービスを利用する権利やプロジェクトが得た収益の一部を受け取る権利などが付与されており、その企業が成功すれば、多くの人がトークンを欲しがるのでトークンは値上がりする。さらにメジャーになれば、仮想通貨の取引所で売買されるようになり、投資家はこれを売却して利益を確定できる。
新しく発行されたトークンが果たす役割を考えれば、形式的には異なるが、実質的には従来の株式に相当するものであることが理解できる。
だが、こうした新しい手法が、既存の法体系や税務、財務のルールと整合性が取れるのかはまた別問題だ。
関連記事
- 仮想通貨で資金調達 投資家をどう守る?
国内外で盛り上がりを見せるICOだが、一方で投資側にはリスクもある。中国や韓国はICOの利用を禁止することを発表したが、日本は規制については“様子見”の状況だ。 - 「仮想通貨はバブルなのか」という議論は不毛だ
現時点において仮想通貨がバブルかどうかを判断するのはナンセンスだと思っている。むしろ仮想通貨に今後、どのような利用形態があり得るのか(またはないのか)について議論した方が建設的だろう。 - 自分の価値を取引する「VALU」の存在価値は?
自分の価値を取引するという新しい概念を提唱した新サービス「VALU(バリュー)」。既に自身を“上場”した人は1万人を超えているそうだが、VALUとはどのようなサービスで、どのような可能性があるのか。改めて整理してみた。 - 「詐欺横行」でも、無視できないICOのインパクト
新たな資金調達の手法として期待されるICO。さまざまな問題点も指摘されているのだが、仮想通貨経済圏を一気に拡大するポテンシャルも持ち合わせている。今回はこのICOについて論じてみたい。 - データを持つ企業が「融資サービス」を加速させる
あらゆるデータを所有するIT事業者などが独自の融資サービスを展開する動きが加速している。近い将来、豊富なデータを持つ企業が、金融機関の与信判断の枠組みを超えるシステムを作り上げるかもしれない。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.