仮想通貨の父「サトシ・ナカモト」の正体がバレているのは本当か:世界を読み解くニュース・サロン(4/4 ページ)
仮想通貨の代表格であるビットコインを発明したサトシ・ナカモトとは、何者なのか。数々のメディアが「この人物がナカモトだ」と報じたが、いずれも誤報。真相は闇に……と思われたが、ナカモトの正体を知っている人がいるとの話が出てきた。それは……。
米政府はナカモトの正体を知っている
簡単に言うと、米政府はナカモトの正体を知っているというのだ。具体的に言うと、米国土安全保障省(DHS)と米NSA(国家安全保障局)はナカモトが誰かを知っている。
ナカモトは姿を消してから、最新の暗号化技術を使い、とにかく身元がバレないようにしてきたという。しかしNSAの技術力を駆使することで、DHSはナカモトを見つけ出したというのだ。NSAが使ったのは「Stylometry(スタイロメトリー)」と呼ばれる技術で、いわゆる電子メールや論文などの文語の特徴から本人を割り出すテクニックだ。
ナカモトは数多くの電子メールやポストなどを残している。それらの文体の特徴をあぶり出し、「PRISM(プリズム)」と呼ばれる大規模な監視プログラムなどを使って、すでにナカモトを見つけ出しているという。プリズムを使えば、何兆ともいわれる電子メールを分析することでき、指紋のような個人の特徴を導き出すことができるというのだ。
ちなみに、過去に同じように「スタイロメトリー」を使ってナカモトを割り出そうとした人がいる。だが比較するための莫大な個人メールなどの文章がなかったために、思うような結果を得られていなかった。
NSAによるナカモトの割り出し作業には、1カ月もかからなかった――ということらしい。
この話を主張しているのは、米国人の起業家で米国Webメディアに寄稿している人物だ。この話をどこまで信じていいのかは正直分からないが、現時点で「ウソ」とは言い切れないのだろう。だからこそ、話のネタになっている。
このようにナカモトの消息をめぐっては、大手メディアの誤報も含め怪しい話も少なくない。ただはっきりとしているのは、ナカモトが名乗り出る気はなさそうだということだ。にもかかわらず、多くの人がナカモトの正体を知りたがっている。
そこでナカモトに訴えかけたい。ナカモトさん、あなたがつくった仮想通貨を使って史上最大規模のコインチェック事件が発生しました。つきましては、ぜひ心境を聞かせていただけませんか? ぜひこちらにご一報を。
筆者プロフィール:
山田敏弘
元MITフェロー、ジャーナリスト・ノンフィクション作家。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト・フェローを経てフリーに。
国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。最近はテレビ・ラジオにも出演し、講演や大学での講義なども行っている。
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