情緒たっぷりの「終着駅」 不便を魅力に転じる知恵とは:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/4 ページ)
広島県のJR可部線が延伸開業してから1周年を迎え、記念行事として「終着駅サミット」が開催された。終着駅が持つ魅力と役割を再認識し、終着駅を生かしたまちづくり、沿線の活性化を考えるという趣旨だ。情緒だけでは維持できない。維持するためにまちづくりが必要。それは日本の地方鉄道の縮図でもある。
地域の意識を高める「終着駅サミット」が始動
過疎化、少子高齢化が進む現在、地方鉄道路線の輸送密度は4000人どころかもっと低い。地方路線というだけでも維持が難しいという状況の中で「盲腸線」の状況は最悪と言っていい。しかし、その盲腸線の末端である「終着駅」を盛り上げようという動きがある。「終着駅サミット」だ。
終着駅サミットは、終着駅のあるローカル線の沿線自治体やNPOなどが結成した実行委員会方式で開催される。第1回は2013年、JR西日本城端線の城端駅をテーマに開催された。城端線は北陸本線の高岡駅から分岐する約30キロの単線非電化路線だ。15年の北陸新幹線延伸開業を控え、城端線には新高岡駅が開業予定。だから高岡〜新高岡間の約2キロは維持される。しかし、北陸本線は並行在来線として第三セクターになると、JR西日本の路線網からは孤立する。そんな危機感の中で、城端線の存続を目指す取り組みの1つだったかもしれない。
そこで、終着駅サミットだ。ローカル線サミットではない。「終着駅」がある路線にこだわった。「終着駅」の情緒は観光の動機となる。鉄道の駅としては圧倒的に少数という希少価値。そこで、終着駅を地域の拠点都市、バスやレンタカー、レンタサイクルなどの二次交通の結節点として生かしたい。つまり終着駅を始発駅として生かすことで、ローカル線の活性化を図ろうという取り組みである。全国の「終着駅」のある鉄道や自治体に呼びかけて、ともに研さんしていこうという意図がある。
第2回は14年、富山県の氷見線の氷見駅。氷見線は城端線と同じく、高岡駅を起点とし北へ向かう路線だ。城端線と同じ悩みを抱える。第3回は16年、石川県の北陸鉄道石川線の鶴来駅だ。石川線は09年に鶴来〜加賀一ノ宮駅間が廃止された。トカゲの尻尾切りのごとく、このままでは次に切られるのではないかという不安もあったことだろう。
第4回は17年、茨城県のひたちなか海浜鉄道だ。ひたちなか海浜鉄道とひたちなか市は、鉄道活性化の取り組みを研究する「ローカル線サミット」を開催しており、共同開催となった。ひたちなか海浜鉄道は自治体の支援のもと、黒字化を目指し、終着駅阿字ヶ浦から国定ひたちなか海浜公園までの延伸計画もある。終着駅サミットに集まった自治体などは、その取り組みに勇気づけられたことだろう。
そして第5回は18年3月4日、広島県のJR可部線、あき亀山駅をテーマに開催された。可部線の可部〜あき亀山間は、17年3月4日に開通した、新しい終着駅だ。可部線はもともと、広島駅に近い横川駅と三段峡駅を結ぶ、約60キロの路線だった。しかし、赤字を理由に非電化区間の可部〜三段峡間が03年に廃止された。しかし、当初より電化延伸を望んでいた人々と自治体の粘り強い交渉が実り、約1.6キロの延伸開業にいたった。(参考記事:「事実上の廃線復活 可部線延伸から学ぶこと」)
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