老舗メーカーが“ポップス”社歌をつくったワケ:あのアーティストが歌いそう(2/4 ページ)
「社歌」を制作する企業が増えている。社員の思いを集めた、おしゃれなポップス調の社歌を作った老舗メーカー、キミカに、その狙いや制作のプロセスについて聞いた。
1曲丸ごと作った社員も
歌詞のフレーズは、想定よりもたくさん集まった。アルギン酸の原料の海藻をイメージする「海の恵み」、会社スローガンである「ベスト・イン・ザ・ワールド」、アルギン酸の研究開発に成功した創業者を敬う「羅針盤さえもない旅路」、アルギン酸の特徴から「粘り強く」――など。全社員の半数程度となる50〜60人が参加してくれた。
なかでも笠原社長の印象に残ったのは、大手メーカーを定年退職後に入社した、ベテラン作業員たちからの応募だ。「社内コミュニケーションとなると、古くからいる人が中心になりがち。ですが、普段はあまり交流できていない人たちからの応募もたくさんありました。現場では遠慮して口出ししづらくても、歌詞のフレーズなら出してみようという気持ちになってくれたのでは」と、笠原社長はうれしそうに語る。
さらに笠原社長を驚かせたのは、歌詞と曲の両方を考え、1曲全部作ってきた社員が2人もいたことだ。1人は、若いころにバンド活動をしていたという50代社員、もう1人は趣味でバンドを組んでいる30代社員。「まさか、全部作ってくれるとは……」と笠原社長は舌を巻く。社員の意外な一面を知ることになった。
このようにたくさんのアイデアや思いが集まってくると、うれしい半面、困ったことが起きた。できるだけ意見を反映させた歌詞を作ろうとすると、全くまとまらないのだ。「集まったフレーズをちりばめて歌詞を作ろうとしたのですが、何が言いたいのか分からない、不自然な歌詞になってしまいました。最も大切なことを伝えるため、フレーズを絞り込まざるを得ませんでした」
その反省を踏まえ、歌詞を実際に作っていくプロセスからは、プロジェクトに関わる人数を最低限にとどめて、進めやすくした。それでも伝えたいことが1曲に収まらず、制作会社からの提案で2曲作ることに。創業者の功績を振り返る「社歌」と、品質へのこだわりがテーマの「スピリットソング」の2曲に落ち着いた。
「『自分の意見が反映されていない』と思う人がいるかもしれない。そう思うと、心苦しいです。参加してくれた社員には、その証として、何かプレゼントできればと考えています」(笠原社長)
関連記事
- 無口な社員も熱く語る “全員参加”社内イベントのつくり方
社内イベントといえば、社員のコミュニケーションを促進する狙いがあるが、それだけではない。会社や仕事について理解を深め、モチベーション向上につなげることが重要だ。社内イベントや社内報などのプロデュース会社に、成功のポイントや事例について聞いた。 - “若手発信”のプロジェクトが職場を変えた 新卒社員の奮闘
社内コミュニケーションの活性化が課題となっている企業は多いだろう。オフィス家具メーカー、プラスの渡辺さんと村山さんは、新卒入社してすぐに社内活性化プロジェクトを担当し、社内の雰囲気を少しずつ変えている。どのように他の社員を巻き込んだのか。 - みずほダンスの“一体感”がヤバく思えてしまう理由
みずほダンスが話題になっている。みずほフィナンシャルグループで実際に働いている約400人のみなさんがキレキレのダンスを披露するPR動画のことだ。「面白い」「見ていて楽しい」といったコメントが多いなかで、筆者の窪田氏は「一抹の不安がよぎる」という。どういうことかというと……。 - バスクリン若手社員が立ち上げた「銭湯部」の効能
入浴剤の老舗メーカーのバスクリンで若手社員が立ち上げた部活動「銭湯部」。廃業によって減っている銭湯を「盛り上げたい!」という思いから始めた活動だが、社内の世代間交流促進にもつながっている。その取り組みについて、仕掛け人に聞いた。 - 社食なのに夜メイン? 発想を変えて理想を実現
「こんな社食があったらいいな」を実現するために、従来の社食のイメージから発想を大きく転換した企業の取り組みとは……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.