若手には新鮮 「社歌」はなぜ盛り上がっているのか:専門家が解説(2/3 ページ)
日本の企業文化として根付いてきた「社歌」。制作の狙いやプロセスは大きく変わっている。多くの社歌を取材してきたジャーナリストの弓狩匡純氏に、最新トレンドや効果的な取り組み方について聞いた。
社外に発信するツールにも
――どういうことでしょうか。
歌詞を社内公募で決める企業は昔から多いのですが、社員が歌詞を考える作業は簡単そうに見えて難しい。「なぜ自分がこの会社にいるのか」を考えないと、歌詞なんて書けないのです。長く在籍していても、あらためて考えないと、意外と会社が見えてこない。「この会社にいてよかったこと」や「充実していたこと」などを深く考えるきっかけになります。
経験したことや感じたことがベースにないと、歌詞は書けません。そのため、自分なりの言葉が集まってきます。同じ会社でも部署や立場によって見方が違います。その考え方の違いに気付いたり、知らなかったことが出てきたりします。出てきた言葉を積み上げていくプロセスが、会社の財産になるのです。
――実際に社歌を作っている企業は、どのような取り組みをしているのでしょうか。
2013年に社歌を制作したNTTデータのやり方は、最新のスタイルと言えます。全世界のグループ企業の社員約6万人から、大事にしている言葉を集めました。それを同社製品の言語解析システムを使って分析し、歌詞にしました。全世界の社員が参加するというだけでなく、会社の特性を生かして、自社製品のPRの場にもしています。
――社内だけでなく、外部にPRするやり方もあるのですね。
外にも発信する、というのは今のブームの傾向といえます。かつて、社歌でプレスリリースを出すことはあまりなかったのですが、近年は大企業が社歌制作や改定の際に、大々的に発表するケースは多いです。良いものができれば取引先やユーザーとも共有する、という考え方です。動画投稿サイトも普及したので、より共有しやすくなりました。
16年には、「中小企業社歌コンテスト」という取り組みも始まり、大企業以外も社歌を作って発信しやすくなってきました。社歌には社風や会社の雰囲気が反映されているので、採用活動の際、学生に会社を知ってもらうツールにもなります。
ただ、現時点では会社案内のような内容になってしまっている企業も多い印象です。社歌とCMは違います。あくまで社員のためのもので、ずっと歌い継がれる歌にする必要があります。
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