10年後の「快適な住宅」とは何か LIXILの展望:自分で“判断”する家へ(1/3 ページ)
「快適な暮らし」をさまざまな視点からデータで実証し、住宅に生かそうとしているLIXIL。家庭内事故を防ぐためには? トイレはどう変わるのか? 10年後の住宅について聞いた。
「快適な暮らし」とは何だろうか。暑すぎない、寒すぎない、危険がない……など、さまざまな見方がある。それをデータで実証し、住宅に生かそうとしているのが、建材・住設機器メーカーのLIXILだ。
家庭内事故を防ぐためには何が必要か? トイレはどのように進化していくのか? 社会の変化とともに、住宅も変わっていく。LIXILが目指す「10年後の暮らし」について、研究部門を統括する二瓶亮取締役専務役員に聞いた。
センサーを取り付けた住宅で実験
――LIXILはドアや窓、トイレなど、あらゆる建材、住宅設備機器を手掛けていますが、暮らしに関するデータとはどういったものでしょうか。どのように集めているのですか。
当社敷地内のモデルハウスにセンサーを取り付けて、温度などを制御する実証実験をしています。住宅全体をネットワーク化するため、窓やドアなどに取り付けているセンサーの数は数百個にも上ります。商品化の段階では、センサーの数は必要最低限になりますが、研究段階では可能な限り増やしています。
集めているのは、快適な空間をコントロールするためのデータです。例えば、お風呂に快適に、安全に入るために考えなければならないのは、浴室の環境だけではありません。リビングから浴室までの「空間」全体を考えて、温度管理などをする必要があります。
――入浴時には、急激な温度差によって体に負担がかかり、事故が起きてしまうケースも多いです。
家庭内事故の死者は交通事故よりもはるかに多く、そのうちお風呂で亡くなる方は年間約5000人もいます。特に高齢者の方は、ヒートショックや熱中症などの危険があるため、温度管理や見守りが事故防止のために重要です。転倒事故も多いですが、転倒しやすい場所のデータを取ることができれば、手すりを取り付けましょう、段差をなくしましょう、などと提案ができます。それは風呂だけ、ドアだけ、トイレだけといった単体の商材ではできません。
これまで、高機能シャワートイレや玄関ドアの電気錠など、単体の商材でデジタル技術を活用する取り組みはありましたが、それらを連動させてどういったものを提供していくか、という考え方はあまりありませんでした。
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