トイザらスを破滅に追いやったのは誰か、得するのは誰か:来週話題になるハナシ(5/5 ページ)
米国の玩具小売大手トイザらスが、米国事業を清算すると発表した。ECサイトの台頭で経営難に陥った……と思われたかもしれないが、本当にそうなのか。真相はちょっと違うようで……。
得はするのは誰か
海外では、すでに撤退が始まっている英国に続き、オーストラリア、フランス、ポーランド、ポルトガル、スペインでも撤退する。カナダ、中欧、アジアでは、まだ店舗の閉鎖は行なっていないが売却先を探っている状態だ。
ちなみに、アジアを統括する「Toys“R”Us Asia Limited(トイザらス・アジア・リミテッド)」は、香港を拠点とするFung Group(フォン・グループ)が15%、米トイザらスが85%を出資している。日本含むアジア諸国で、400店舗以上展開している。日本のトイザらスは今後も事業を継続するようだが、その動向が注目されている。
だが、悪い話ばかりでもない。今、米国内のトイザらスを救おうという動きが出ているのだ。ファッションドールの「ブラッツ」を製造販売しているMGA Entertainmentの最高経営責任者、Issac Larian(アイザック・ラリアン)が発起人として、トイザらスの店舗を救済しようとしている。
ラリアン氏は、所有する会社の資金ではなく、個人資産を投入してトイザらスの救済に動いている。その理由は、ブランドに対する懐かしい思いだけではない。トイザらスの倒産によって失業する3万人もの従業員のほか、オモチャ業界に携わる13万人の職を救うことになると見ているからだ。
同じ業界に身を置く人間として、トイザらスが死に絶えていくのを黙って見ていられないということだろう。
実は、そこに思わぬ横やりが入りそうな気配がある。トイザらスの救済に興味を持っているのは、ラリアン氏だけではなく、一部報道によると、アマゾンが買収に興味を持っているという。
と言っても、アマゾンが欲しいのはトイザらスの店舗であって、ブランドの救済ではない。自社製品のショールームとして、トイザらスが所有する店舗を活用したい考えのようだ。
そういう救済なら、トイザらスのファンは複雑な気持ちかもしれない。
現在、トイザらスは閉店セールを開催中で、撤退に向けて動いている。最終的にトイザらスを救うのは誰なのか分からないが、1番得するのはやっぱりアマゾンなのかもしれない。
来週話題になるハナシ:
24時間365日、いまも世界のどこかでユニークで刺激的な話題や新しいトレンドが次々と生まれている。だが、大半は情報としてこぼれてしまっている。そんなメインストリームでない情報こそ、ビジネスで使えるネタが詰まっているのではないだろうか。
そこで、情報感度の高いビジネスパーソンならば、ぜひとも押さえておきたいトレンドや話題をちょっと先取りして紹介したい。プライベートにビジネスに、ちょっとしたインスピレーションのネタとして、役立つハナシを探るコラム。
著者プロフィール:
藤井薫(ふじい・かおる)
大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。
『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。
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