「あるはずの駅がない」? “観光用路線図”のヒミツ:あなたの知らない路線図の世界(1/2 ページ)
用途と目的によって姿を変える路線図。外国人観光客向けに作られた路線図は、普段私たちが触れているのとは違った景色を見せてくれる。中には「天狗」が登場する路線図も……?
いま、皆さんはどんな服を着ているだろうか。会社にいるならスーツ、布団の中ならパジャマだろうか。夜に予定があればオシャレをし、暇な休日ならジャージーかもしれない。用途と目的によって、服装の色や形はさまざまに変わるだろう。路線図も同じである。
路線図には、路線や駅のつながりを案内するという役割がある。しかし、さらに用途によってさまざまに姿形を変えたものもあるのだ。例えば「外国人観光客向け」に描かれた路線図は、普段私たちが触れている路線図とまた違った景色を見せてくれる。
観光用路線図に隠された「ここを見てほしい」
2017年に日本を訪れた外国人旅行者の数は約2869万人。5年連続で過去最高を更新しており、政府は20年に4000万人にまで増やす目標を掲げている。となれば、交通インフラの多言語対応は必至だ。
路線図にも“多言語対応の波”がやってきた。駅名の横に英語表記を付けるケースが多いが、最近では英語以外の路線図を用意する鉄道会社も増えてきた。アジア圏からの観光客に対応するには、中国語や韓国語の路線図も必要になる。
また、東京メトロでは、路線図から切符を購入できる券売機の設置を順次進めている。モニター上で言語を切り替えられ、英語のみならずスペイン語やタイ語までも対応可。多言語への対応が柔軟にできるのが強みだ。
さて、ここに挙げた路線図は言わば「オフィシャル」のものだが、路線図には「観光用」に作られたものもある。例えば、JR東日本制作の「Railway and Subway Route Map」は首都圏のJR・私鉄・地下鉄を1枚に収めたもの。とはいえ、全ての路線を掲載しては煩雑になるため、適度に省略が行われているのが見どころだ。
成田空港や羽田空港からのアクセスを描いているが、途中駅はバッサリとカット。池袋から先の有楽町線や、西葛西から東の東西線も消えている。ゆりかもめの停車駅は半分程度に減り、京浜急行本線は品川から京急蒲田まで。JR東日本制作ゆえ多少の“JRびいき”があるのだが、「外国人観光客にとってどこが必要な駅か」を判断した形跡が残る。
関連記事
- 小田急電鉄の路線図はどこが変わったのか
ダイヤ改正に伴い路線図を一新した小田急電鉄。リニューアルした路線図はどう変わったのか? 路線図マニアが読み解く。 - 同じ駅なのに、なぜ「駅名標」の書体が違っているのか
駅名が書かれている「駅名標」をじっくり見たことがあるだろうか。よーく見ると、鉄道会社によって書体が違っていたり、同じ駅でもデザインが違っていたり。また、全国的に新しいモノを設置する動きが広がっている。なぜ、このようなことが起きているのかというと……。 - なぜ時刻表に“謎ダイヤ”が存在するのか
鉄道の時刻表を調べる際、スマホで検索している人が多いだろうが、実は紙の時刻表をじっくり見ると、興味深い情報がたくさんある。例えば、実際に走っていない特急が走っていることも。どういうことか。『JTB時刻表』の大内編集長に、謎ダイヤの真相を聞いた。 - 東京都の「選ばれし6路線」は実現するのか
東京都は「平成30年度予算案」に「東京都鉄道新線建設等準備基金(仮称)」の創設を盛り込んだ。2016年に交通政策審議会が答申第198号で示した24項目のうち、6路線の整備を加速する。6路線が選ばれた理由と、選ばれなかった路線を知りたい。 - 6畳弱の狭い物件に、住みたい人が殺到している理由
6畳弱の狭い物件が人気を集めていることをご存じだろうか。物件名は「QUQURI(ククリ)」。運営をしているピリタスの社長に、その理由を聞いたところ……。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.