「昭和の喫茶店」が廃れる一方で「ルノアール」が好調な理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/5 ページ)
低価格が武器のコーヒーチェーンが伸びる一方で、昔ながらの「昭和の喫茶店」が次々と閉店を余儀なくされている。喫茶店としては割高な料金でゆったりと過ごせる椅子やテーブルが特徴の「喫茶室ルノアール」が好調だというが、その理由とは?
チェーン展開にも積極的
89年には日本証券業協会に株式を店頭登録(現・JASDAQに上場)。喫茶業界初の上場企業となっている。翌90年には早くも自社発行のプリペイドカードを導入。それ以前のことだが、83年に本格的なPOSシステムを導入して業務効率化を図ったのも、業界初であった。
ルノアールは伝統的な純喫茶スタイルを取りながらも、いち早くチェーン展開。今もWi-Fiや無料で使える電源を業界に先駆けてサービスに組み込んでいるように、飲食業界の古臭い因習にとらわれずに変化し続ける社風がある。
17年4月からは期間限定で創業当時の香味を再現した「復刻版ルノアールブレンド」を提供して好評を博したが、85年頃はまだコーヒーも砂糖もミルクも高価な時代。濃いめのコーヒーに、たっぷりのコーヒークリームと砂糖を入れて飲むのが、ぜいたくな嗜好品としての楽しみ方だった。
今のルノアールのコーヒーは、酸味を抑えて苦味を強調している。さらには糖分を控える健康志向の高まりからブラックでも飲みやすい方向にシフトしている。昔から変わらないように見えても、時代の変化に対応している証拠である。
伸び悩む新業態
近年の課題としては、新業態開発に熱心に取り組んでもいるが、いずれも伸び悩んでいることが挙げられる。
99年には低価格・セルフサービスの「ニューヨーカーズ・カフェ」をリリース。エスプレッソをメインとする、スターバックスに対抗したモダンな業態で、現在は7店ある。
12年には、カナダのバンクーバーを拠点とするシアトル系コーヒーチェーン「ブレンズコーヒー」を日本でフランチャイズ展開していた、ビーアンドエムという会社を買収しているが、現在は東京・青山と埼玉・川越に2店あるのみだ。
また、03年には女性向けフルサービスのパンケーキやパスタを充実させたエスプレッソも飲める「カフェ・ミヤマ」1号店を新宿南口に出店。現在は7店ある。ルノアールをややカジュアルに寄せて、エスプレッソマシンを導入した「カフェルノアール」という業態も7店ある。
12年に、埼玉県朝霞市にログハウス風の店舗で、広い駐車場を持つ郊外型喫茶「ミヤマ珈琲」を新提案。コメダを標的に全国展開を目指すもいまだ6店にとどまっている。さらには、ハンドドリップ、カフェプレスによりシングルオリジン(単独農園)のスペシャルティコーヒーを提供する、ブルーボトルコーヒーに対抗したサードウェーブ系「瑠之亜珈琲」を、15年にオープンしていて、飲食ビル「銀座インズ」に1店ある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ブルーボトルコーヒー、この1年をすべて振り返る
米国発のカフェ「ブルーボトルコーヒー」が、日本に上陸して1年が経った。オープン当初は行列ができていたが、なぜ多くの人は一杯のコーヒーを求めて何時間も並んだのか。同社の井川取締役に分析してもらったところ……。
ブルーボトルコーヒーは店の裏で何をしているのか
米国発の喫茶店「ブルーボトルコーヒー」が日本に上陸して、1年が経過した。カフェといえばテクノロジーの世界とはあまり縁がないように感じるが、実は……。
なぜいま“昭和型”の喫茶店「コメダ珈琲店」が人気なのか
ジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、人気企業・人気商品の裏側を解説する連載。今回は急成長中のコメダ珈琲店について読み解く。
後発の「ゆで太郎」がそば業界首位になった理由
「挽きたて」「打ちたて」「茹でたて」のそばを提供して急激に店舗数を増やしているのがゆで太郎だ。今回は、後発ながら富士そばや小諸そばを追い抜く原動力となった同社のこだわりと戦略を紹介する。
過熱する「チーズタッカルビ」ブーム いつまで続く?
韓国料理をベースにしたフュージョン料理「チーズタッカルビ」がヒットしている――。今回は、チーズタッカルビなる料理が日本の外食で広がっている現況と、新大久保コリアン街を再生させて、日本全国に普及した過程を解説していきたい。
