「昭和の喫茶店」が廃れる一方で「ルノアール」が好調な理由:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/5 ページ)
低価格が武器のコーヒーチェーンが伸びる一方で、昔ながらの「昭和の喫茶店」が次々と閉店を余儀なくされている。喫茶店としては割高な料金でゆったりと過ごせる椅子やテーブルが特徴の「喫茶室ルノアール」が好調だというが、その理由とは?
新業態店の課題
確かに、どの業態もクオリティは高い。しかし、銀座ルノアールの売り上げに貢献していないとまでは言わないが、第2の柱に達していないのは明らかだろう。競合他社の強い業態をベンチマークしたものが多く、ルノアールのようなオリジナリティを感じられないのも事実である。
しかし、郊外型喫茶のミヤマ珈琲は、従来の直営ではなくフランチャイズ展開をしている。地域のオーナーを中心としたコミュニティづくりに貢献したいという、2代目社長・小宮山文男氏の強い思いが反映されている。コーヒー豆の仕入れ先であるキーコーヒーと資本提携したのも、ミヤマ珈琲を成功させたいからだったといわれている。
銀座ルノアールの筆頭株主である花見煎餅は13年、キーコーヒーに全株式を売却して子会社となった。さらには、18年2月に現在の小宮山誠社長は58万株を5億円で売却。出資比率が24.68%から34.19%へと引き上げられている。つまり、キーコーヒーの子会社化が進んでいる。
銀座ルノアール側からすれば、仕入れとコーヒーに関する技術面での連携に、大きなメリットがあることは間違いないが、キーコーヒーに郊外型店舗開発のノウハウがあるとは思えないのがネックだ。ただし、キーコーヒーはカフェやレストランを展開する「イタリアントマト」を子会社にしているので、フランチャイズビジネスのノウハウは持っている。
ミヤマ珈琲は15年には熊本にフランチャイズ店を2店オープンしたものの、1店は閉店してしまっていて、顧客からの評判は高いとされるにもかかわらず停滞感がある。ミヤマ珈琲の弱点は何だろうか。例えば、コメダのシロノワール、星乃珈琲店のスフレパンケーキ、元町珈琲のワッフル、高倉町珈琲のリコッタパンケーキのような名物スイーツがない。キーコーヒー傘下にあるアマンドの果実感あふれたフレンチトーストを導入するなどの強力なテコ入れが必要だろう。
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