4241日ぶりに勝利をつかんだ、松坂大輔と倫世夫人の絆:赤坂8丁目発 スポーツ246(3/4 ページ)
平成の怪物、松坂大輔投手が12年ぶりに白星をつかんだ。勝利を手にした日は母親の誕生日だったのにもかかわらず、ウイニングボールは「家族」に渡すという。なぜ妻や子どもに渡すのかというと……。
愛する夫人にリスペクトの気持ち
自分のわがままを聞いてもらった上、いつも家庭のことをほったからしにしてしまって申し訳ない。子どもたちにもなかなか会えず、ずっとつらい日々を過ごさせてしまっている――。松坂はボストンを離れて以降、特に日本球界復帰を果たした2015年から現在に至るまでずっと自責の念にかられながら、時に涙することもあったという。
もちろん倫世夫人は松坂の言葉を信じてずっと家庭を守り、じっと耐えながら子どもたちを育て上げてきた。松坂が日本に帰国してプレーしているにもかかわらず、ボストンで悠々自適に暮らしていると一部で報じられ「悪妻」「鬼嫁」などと迷惑なイメージが勝手につくられても何も反論しなかったのは、きっと夫との固い約束があったからに違いない。
ソフトバンク時代の1年目が終わった2015年オフ。3年12億円の大型契約とともに9年ぶりの日本復帰で大きく期待されながら一軍出場は一度もなく何もできないまま終わり「給料泥棒」と叩かれ始めていたことで世間からの評価は急降下していた。そうした逆境の中でボストンへ戻った際、松坂は倫世夫人に次のような言葉を口にしたと聞く。
「何もできなかったのは自分の責任。言い訳はしないから今は何を言われても黙って耐える。だから、どうか我慢してほしい。絶対にいつか笑えるときがくるから」
おそらく倫世夫人は妻として忠実な気持ちを貫いて愛する夫に従い、自身に対する誹謗中傷(ひぼうちゅうしょう)も柳に風とばかりに受け流しながら「いつか必ず自分たちの思いは叶う」と信じていたのだろう。
自分の願望を無理強いで聞いてもらい、家庭を守り切ってくれた良妻がいたからこそ松坂も苦難の末、日本球界での白星をつかむことができた。感謝の気持ちを抱いているが故に4月30日のDeNA戦勝利後はウイニングボールを母親の誕生プレゼントではなく妻と3人の子どもたちに渡すと言い切った。
ちなみに松坂は倫世夫人を「カミさん」「奥さん」とは絶対に言わない。公式の席であろうが、プライベートの場であろうが、常にいつ何時でも「妻」で必ず通す。愛する夫人にリスペクトの気持ちも持ち続けているからだ。
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