ぼくがダメ社員を脱却し、名プロデューサーになれた理由:人生やらなくていいリスト(3/3 ページ)
筆者の前職はレコード会社勤務のアーティストプロデューサー。絢香、Superfly、平井堅、CHEMISTRY、河口恭吾などのアーティストを手掛け、CDの累計売り上げ2000万枚という実績を残すことができた。けれども30歳になるまではまったくのダメ社員だったという……。
そんなアーティストのむき出しの素の歌声の真髄を体感できる、ライブがもっとも好きだ。なぜなら、彼らの音楽活動において、ステージ上でのパフォーマンスこそが「もっとも自分をさらけ出す行為」だからだ。何百人、何千人、時には一万人を超える人の前に歌声一本で立つこと以上に、自分をさらけ出す場面なんて他にはそうないだろう。観客たちは、そんな彼らの「さらけ出された姿」に感動するのだ。それを体験したくて、わざわざ人はライブ会場に足を運ぶ。
そしてぼくは、彼らがステージで我を忘れた瞬間に時おり見せる、「音程を外し、バンドの演奏を無視して歌が暴走」というような、完全にさらけ出してしまった姿に、震えるほど感動する。
これは、「リハーサルを繰り返して完成させた型を再現する」という、本来の方針から外れてはいる。だが、ライブ後のアンケートでは、多くの人がその瞬間のことを絶賛する。人は、「計算し尽くされたアート」に感銘は受けるが、「計算を超えたアート」に、より心打たれるものなのである。
音楽アーティストとは、すべてをなげうって、大好きな音楽だけに賭けている人たち。そんな彼らの、子どものように真っ直ぐな「ありのままの姿」に、感動するのだ。
ぼくがずっと好きになれなかったのは、本音を隠しながら接してくる「オトナな人たち」だった。心許せる友だちがなかなかできなかったぼくは、生きる苦しみを周りのせいにしていた。でも音楽アーティストと接して、そんな自分こそが、ありのままをさらけ出せていなかったことに、ようやく気付けたのだ。
それ以降、音楽アーティストたちと苦楽をともにする時間、彼らのために働く時間が、何よりも充実した時間となった。そして、彼ら以外にも、「自分をさらけ出す勇気をもって生きているオトナ」が、ちゃんと存在していたことに気付けるようになった。
人前でうまく話せない、顔が赤くなることをからかわれる、チック症をバカにされる、いじめられる。ぼく自身、学校や会社で、常に居心地の悪さを感じていた。
レコード会社で、一見華やかな仕事をしながら(実際は8割が地味な業務だが)、人と対面する時には、心のなかではいつも極度の緊張と小さな恐怖と戦っていた。しかし、音楽アーティストたちと過ごした長い年月のおかげで、「自分らしく、ありのままでいい」という人生の真髄を、理解できるようになったのだ。
あなたにとっての「絶対個性」とは何か。それを見つけ出していただくために、ぼくはこの本を書いた。
著者プロフィール
四角大輔(よすみ だいすけ)
1970年大阪生まれ。モバイルテクノロジーを活用することで場所の制約を受けないワークスタイルを構築し、ニュージーランドの湖で半自給自足の”森の生活”を、年の数ヶ月は世界中で”移動生活”を送りながら様々なプロジェクトを手がける。
Instagram、多数の連載、公式メディア〈4dsk.co〉を通して独自のライフスタイルシフト論を発信。アーティスト育成と大自然への冒険をライフワークとしながら、複数の企業の役員やアドバイザー、大学非常勤講師、会員制コミュニティ『Lifestyle Design Camp』学長を務める。著書に、12万部を突破し若者のバイブルともなっている、『自由であり続けるために 20代で捨てるべき50のこと』や、『モバイルボヘミアン 旅するように働き、生きるには』、『The Journey 自分の生き方をつくる原体験の旅』など。レコード会社プロデューサー時代に配信を含めて10度のミリオンヒット、CD売上2000万枚を記録。
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