神社専門のクラウドファンディングサイト始動:ターゲットの狭さには訳があった(1/2 ページ)
神社専門のクラウドファンディングサイトが登場した。神社が全国から支援者を募れる仕組み。IT化が進んでいない神社業界の慣習を熟知した上で作られている。
一般人から企業、自治体に至るまですっかり利用が定着したクラウドファンディング。このたびついに、神社専門のサイトがオープンした。特定のジャンルに絞ったクラウドファンディングサイトはよくあるが、ここまで対象を絞った例は珍しい。背景には、神社という古い業界で伝統を尊重しつつITを導入しようとした運営側の工夫があった。
神社の「ファン」増やし支援
神社専門のクラウドファンディングサイト「すうけい」を5月9日にスタートさせたのは、一般社団法人神社崇敬(すうけい)会(東京都目黒区)。現在、戸隠神社(長野市)、桑名宗社(三重県桑名市)、戸越八幡神社(東京都品川区)の3社のページが開設されている。これらの神社を応援したい人が各ページでお金を払い、お札やお守りなどの特典をもらうという仕組みだ。今後は登場する神社の数を増やすほか、オリジナル授与品の企画製造にも取り組む。
ここまでは、「企業や人のファンを募りお金を集める」という一般的なクラウドファンディングと変わらない。ではなぜ神社専門に絞ったのか。神社崇敬会の代表理事を務める秀島康右さんによるとそもそもこのサイト、当初は「クラウドファンディング」という名称ではなかった。神社の「崇敬会」と呼ばれる組織のネット版を作るというのが本当の目的という。
崇敬会とは神社の支援者を集めた組織のこと。一般的に神社のある地域に住む信者を「氏子」と呼ぶが、崇敬会員は遠くに住む人でもなれる。複数の神社の会に入会することも可能だ。大きな有名神社にはこの崇敬会があることが多い。ただ、秀島さんによると全国の崇敬会員は年々減少傾向にあり、あまり稼働していないところも多い。参拝者や氏子も減って経営の苦しい神社が多い中、ネット上で崇敬会を組織すれば遠隔地にいる人にも神社を支援してもらえると考え、サイトを企画した。
その中で「崇敬会の仕組みはクラウドファンディングとそっくり。崇敬会という名前だけではネット上であまり響かないと思い、キャッチコピーにクラウドファンディングを使った」(秀島さん)。実は、クラウドファンディングに参加しているのは神社そのものでなく、その崇敬会という形をとる。支援者はサイト上でそこに入会する仕組みだ。
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