カギは企業と学生の「共感」 AI使ったOB訪問システムが若手の離職防止に効く訳:学生に待遇よりも社員の生き様を伝える(2/3 ページ)
OBと学生をマッチングさせるサービス「VISITS OB」が着目されている。求人情報でなく互いに共感し合った学生とOBが結び付き採用につながるため離職防止になるという。
共感なき採用が離職を生む
共感の点で両者がマッチングしたかどうかはAI(人工知能)を駆使して可視化される。プロフィールにある文言をデータとして処理することで、どういったキーワードや内容に共感しているかを分析する。結果、どういった生き様のOBがどんな学生と共感しやすいのかなどを運営側が数値化。企業側の採用戦略に生かす。
共感したOBに訪問した学生からも「コンサルタントにドライなイメージを持っていたが、困った時には社員同士で助け合うという話を聞きイメージがガラリと変わった」(コンサルタント・ベンチャー業界志望の女子大生)などと好評だという。
では、なぜ共感が離職防止につながるのか。共感をマッチングの指標にした理由について、VISITS Technologiesの松本勝社長は就活を「桃太郎」に例えて説明する。「桃太郎が犬や猿に対してきび団子をいくつ渡せばお供になるかといった交渉をしていては、(鬼退治に行く前に)彼らの気持ちもなえてしまう。『一緒に鬼を倒そう』という思いに共感できれば、学生は入社しようと思える」(松本社長)
松本社長は若手社員が早期退職する理由について、この共感の部分で入社前に会社とマッチングしていなかった点を指摘する。「会社とはあくまで共感を元にしたつながり。なのに日本の企業は給与や福利厚生といった利害関係、つまりは『きび団子』を提示して新人を採る。しかし、入ったら『鬼を倒すことに共感しろ』、つまり企業理念への共感を求めてくる。(入社前に説明していない理念への)共感を入社後に新人に求めるのはおかしい」(松本社長)
また、松本社長は会社で「何の」仕事をするかより、「なぜ」この仕事をするのかという点に共感して入社する新人の方が辞めづらいとも指摘する。実際、大企業からの転職希望者と面談してよく聞くのが「入社前に聞いていたのと違う仕事内容で嫌になった」という理由だという。「企業の中であてがわれる仕事内容は必ず変化する。しかし、企業の理念は変わらない。『何を』の一致でなく『なぜ』への共感で採用すべき」(松本社長)
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