JR西日本「山陰キャンペーン」で知る、JRグループの課題:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(2/6 ページ)
JR西日本は近畿圏の強い輸送需要を抱える半面、沿線人口が減り赤字傾向の山陰地方のてこ入れが課題となっている。7月から始まる「山陰デスティネーションキャンペーン」が大きなチャンスだ。
新しい観光列車がデビュー、臨時列車も注目
まずは全体像の把握から。山陰DCの目玉企画は4つ。山陰に古くからある魅力と新しい観光資源がふんだんに盛り込まれている。
目玉企画のトップは「大山開山1300年祭」だ。標高1729メートル、伯耆大山とも呼ばれ親しまれている大山は、他の多くの山々と同じく信仰の対象でもあった。奈良時代の718年に金蓮上人が大山寺を開いたとされ、2018年はそれから1300年にあたる。信仰によって作られた街道は商業の発展にも寄与したという。参道に約100本の和傘を並べライトアップする「大山大献灯」が行われる。
2つ目は「不昧公(ふまいこう)200年祭」。不昧公は松江藩松平家7代藩主、松平治郷だ。大赤字だった松江藩の財政を大幅なリストラと特産品生産で立て直し、その豊かな財産で茶の湯文化を極めた。しかし華美な流派とせず、千利休の侘びの文化に立ち戻り、江戸時代を代表する茶人となった。この茶の湯文化が、松江を京都、金沢と並ぶ日本三大菓子処に昇華させたという。夜間に松江城の堀などに行灯(あんどん)を並べる松江水燈路を開催。記念茶会などが開かれる。
3つ目は新しい観光列車「あめつち」のデビューだ。監修は出雲市出身の映画監督、錦織良成氏。『白い船』『うん、何?』『RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語』の出雲三部作や、薬師丸ひろ子さん出演の『わさお』、劇団EXILEの青柳翔さん主演の『たたら侍』で知られる。車両デザインはスタジオジブリ作品を多く手掛けたアニメーション美術監督の吉田昇氏。『ハウルの動く城』『崖の上のポニョ』などの美術監督だ。
あめつちは山陰本線の鳥取〜出雲市間を走り、車両は国鉄キハ47形2両編成を改造した。外観は空と海をイメージした「紺碧(こんぺき)」、車体下部に山陰の山並みとたたら製鉄の日本刀をイメージした帯が入る。車内は白木の質感をテーマとした明るいインテリアで、カウンター席、2人用テーブル席、4人用テーブル席がある。全席グリーン車指定席で、主にDC期間の土日月曜日に運行する。下りは鳥取駅発が午前9時、出雲市駅着が午後0時47分。上りは出雲市駅発午後1時41分、鳥取駅着午後5時36分。
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