登山家・栗城史多さんの死の意味を問う 冒険家の阿部雅龍さん:「美談」で片付けられないわだかまり(1/4 ページ)
登山家・栗城史多さんの死に冒険家・阿部雅龍さんがざらつく思いを語った。周囲の期待に応え過ぎたかもしれないとみる一方、「責任はあくまで彼自身にある」と話す。
エベレスト登頂を目指し、下山途中で遭難して5月に遺体で発見された登山家の栗城史多(くりき・のぶかず)さん。「冒険の共有」というメッセージを掲げながらエベレストに挑み続けた栗城さんの死に、多くのファンが悲しんだ。
踏破困難な山や極地に挑み、残念ながら亡くなった著名な登山家や冒険家は少なくない。しかし、栗城さんの訃報は他の登山家の死とは少し違う波紋をもたらしているようだ。メディアに多く取り上げられながら、エベレストの困難なルートを「単独無酸素」という過酷な条件で挑んだ栗城さんの登山スタイルには以前からいろいろな意見が上がっていた。
今回、栗城さんについて話を聞いたのは3回の北極踏破やアマゾン川のいかだ下りなどを成功させてきた冒険家、阿部雅龍さん(35)。人力車の車夫の顔も持ち、11月には南極冒険にも挑戦する。栗城さんと同様、支援者やスポンサーに支えられていくつもの冒険に挑んできた。生前の栗城さんと面識のある阿部さんに、彼の死に何を思ったのかを聞いた。
わだかまりの残る栗城さんの死
――栗城さんが亡くなられたことをどう受け止めましたか。
4年ほど前、彼の講演会に行ったときに控室で会ったことがあります。彼が登山の際の凍傷で指をなくした後で、包帯を付けた手で握手を求めてくれた。きさくでみんなから好かれているのが分かる人でした。講演会の後も、観客にわざわざ3方向におじぎをしていました。彼とは学年も一緒でした。
今回の彼の事故死は、どこか「ざらっ」としてる印象があります。冒険の途中で亡くなった友人は何人もいますが、もっと「すっ」と受け止めていました。もちろん彼らの死も悲しいが、どこかさらっとしている。でも、栗城君の話はわだかまりが残る。消化されない。分からない部分が多いからです。
冒険で亡くなった他の友人たちについては、僕は彼らの気持ちが分かる。死にたくはなかっただろうけれど、そんな困難な道にチャレンジしたことはある意味尊いからです。僕らは一般の人々より死に近いところにいる。一般論では語れない部分です。
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