NewsPicksの広告「さよなら、おっさん」はいけない。「こんにちは」である:常見陽平のサラリーマン研究所(1/3 ページ)
意識高い系ニュースキュレーションサービス「NewsPicks」が、ちょっと珍妙な広告を出していた。日本経済新聞に、カラー全15段で「さよなら、おっさん。」と書いていたのである。刺激的なキャッチコピーであるが、この言葉に対して、筆者の常見陽平氏は違和感を覚えたという。なぜかというと……。
実に珍妙な広告を見かけてしまった。日本経済新聞の2018年6月26日付朝刊に掲載された、NewsPicksの広告である。
同サービスについて、筆者は勝手に「意識高い系ニュースキュレーションサービス」と呼んでいる。簡単に説明すると、専門家(と呼ばれる人たち)がピックアップしたニュースや、独自に取材した記事、オリジナルの連載を読むことができるサービスだ(有料購読あり)。最近では『週刊SPA!』の前編集長、金泉俊輔氏が編集長に就任。意識低い系から意識高い系へ転身して話題になった。
肝心の広告は、カラー全15段で「さよなら、おっさん。」というなかなか刺激的なキャッチコピーが掲載されていた。いかにも、ビジネスパーソンが読む日経において、挑発的な発言である。もっとも、実際は長い説明文があり、この「おっさん」というのは単に年齢のことを言うわけではなく、物事に対するスタンスなどを意味する。
この広告は日経だけではなく、交通広告でも展開されていた。筆者はJR東日本の中央本線で見かけた。中吊りだけでなく、ドア横にも掲載され、やはり同じようなトーンで挑発的な言葉が展開されていた。
ここからは筆者の意見になるが、いろいろと残念な広告だったと言わざるを得ない。一言で言うと、お金の無駄遣いであり、見る者を不愉快にさせるものだ。キャッチコピーはインパクトがあるのだが、その後の説明文は視認性が低い上、中身もまどろっこしく、何が言いたいのかよく分からない。
広告というのは「暴力的」な側面がある。よくこの手の炎上気味になるコンテンツについて、ネット上では「嫌なら見るな」というテンプレ的な批判がある。ただ、広告というのは目に入ってしまうわけであり、その点において暴力的なものである。よく読まないと真意が分からないのは読者にとって優しくない。
意識高い系メディアであれば多様性を肯定すべきなのに、排除の論理を振りかざしているのもいただけない。ジャーナリズムに関わる者ならば、価値観の違うものとどのように向き合うかを考えなくてはならない。
もっとも、意識高い系メディアとして「NewsPicks」の立ち位置を鮮明にしたとも言える。「お前らとは違うんだぞ」という偉そうな路線である。皮肉なことに、この人たちのセンスも「おっさん」なのではないかと思ってしまったのだ。
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