JR東日本が歩んだ「鉄道復権の30年」 次なる変革の“武器”とは?:杉山淳一の「週刊鉄道経済」(3/5 ページ)
「鉄道の再生・復権は達成した」と宣言したJR東日本。次のビジョンとして、生活サービス事業に注力する「変革2027」を発表した。鉄道需要の縮小を背景に、Suicaを核とした多角的なビジネスを展開していく。
これからの鉄道の10年 羽田空港アクセス線も始動
「変革2027」は、鉄道以外のサービスの開発と展開に大きくページ数を割いている。しかしその前に、鉄道の取り組みを踏まえておきたい。
鉄道については、便利な道具としての鉄道を追求していく方針だ。ローカル線を存続するために、運行コストを少しでも下げたい。ハイブリッド車両を開発し、効率の悪い気動車の置き換えに早くから着手した。その運用経験が、電気式ディーゼル車両、蓄電池式電車の開発につながった。次の段階として、水素エネルギーによる燃料電池車両の開発が始まっている。新幹線については、時速360キロの試験車両「ALFA-X」の開発に着手。1年前の7月4日に「2019年春に完成予定」と発表していた。無人運転の取り組みも始まる。
路線網については、羽田空港アクセス線の推進がある。東海道本線田町付近から分岐し、旧貨物線経由で東京貨物ターミナルへ、そこから新線を建設して羽田空港ターミナルに至る。このほか、東京貨物ターミナルに車庫を持つ「りんかい線」と直通して埼京線に乗り入れるルート、りんかい線に直通して新木場に至るルートが構想されている。
羽田空港アクセス線の3つのルートの完成で、東京駅と新宿、渋谷、池袋の副都心が羽田空港と直結される。上野東京ラインを介して北関東や常磐線沿線も羽田空港と直結。新木場からは幕張メッセ、東京ディズニーランドへも連絡できる。くしくも「変革2027」が発表された翌日の7月4日、りんかい線とJR京葉線の直通運転を実現させるための議員連盟が発足したと報じられた。自民党12人、民主党3人、公明党2人、共産党1人、他1人の超党派議連だ。
りんかい線と京葉線は線路がつながっているけれども、運賃精算の経路判定ができないという、鉄道事業者側の都合で直通運転が実現できていない。しかし、羽田空港発着便に限れば、羽田空港で精算となるため、直通可能になるかもしれない。りんかい線と京葉線はどちらもオリンピック関連施設ができる予定で、議連としては東京オリンピックを契機にしたい考えだ。実現すれば、羽田空港アクセス線の建設に向かって追い風になる。
もう一つのトピックスは、品川〜田町間に建設中の新駅と、その周辺の“新・国際交流拠点”の「グローバルゲートウェイ 品川」だ。駅を設置し、周辺の土地に付加価値を生み出す。そう、小林一三イズムがようやく実現する。小林一三が住宅販売を始めてから100年以上たって追い付いた形だ。そしてここは単なる不動産付加価値ビジネスではなく、「水素社会」「鉄道と2次交通の連携」「スタートアップ支援」「ラボ機能」などを組み込み、JR東日本グループが挑む新施策のショーケースとなる。つまり、この新駅が「変革2027」の象徴となる。
なお、相模鉄道と直通運転する「東部方面線」については特段に触れられていなかった。JR東日本にとって期待度が低そうだ、という印象を受ける。
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