過去最高、それでも足りない外国人労働者:外国人就労に変化の兆し(3/3 ページ)
政府は人手不足が深刻な農業など5分野を対象として、新たな在留資格を創設する。これにより外国人就労のハードルは大きく下がった。しかし……。
諸刃の剣となる理由
外国人就労の拡大は、人手不足という成長制約を打破するための手段となるだけではなく、異なる文化的背景が新たな発想を生むことで、企業の成長を加速させる原動力ともなる。
経済的な有益性が多くある一方で、一般生活や雇用に与える影響については懸念が根強い。2004年に内閣府が行った外国人労働者の受入れに関する世論調査によると、単純労働者の受入れを認めない理由として、「治安が悪化するおそれがある」との回答は74.1%、「不況時に日本人の失業が増加するなど雇用情勢に悪影響を与える」との回答は40.8%に達する。
これらの懸念を解消するためには、多文化共生で一歩先を行く、独仏の経験を学ぶことが有益だろう。なお、外国人労働者への依存の高まりは、日本の経済構造のぜい弱化にもつながる可能性がある。帰国が前提となる就労では、日本企業の技術や技能の伝承が危うくなるかもしれない。労働力不足は、他の先進国でも共通の課題であり、国際的な人材獲得競争は激しさを増している。依存度の高い分野で人材流出が生じれば、新たなリスクとして顕在化する可能性もある。
おわりに
現在人手不足が深刻化している産業では、労働を資本で代替することが相対的に難しい。今後真価を問われる女性活躍や技術革新などの取り組みは、期待通りの成果を発揮するまでに時間を要するかもしれない。
外国人就労の拡大はさまざまな観点から議論が必要であるが、待ったなしの課題となっている人手不足への対応を疎かにすることもできない。日本経済の持続的な成長を損なわないためにも、コンティンジェンシープランとして外国人就労の拡大を検討し始めておくことは必要だろう。
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