大和証券Gが実践、ベテラン社員が活躍し続けるための経営改革とは?:メタボ指導がきっかけ(1/2 ページ)
大和証券グループ本社は2008年度から本格的な健康経営をスタート。労働人口が減り続ける中、とりわけベテラン社員の活躍がますます重要になるという課題認識があったという……。
「社員の健康は会社の生産性向上に直結する。特に今後ますます人手不足が加速する中で、ベテラン社員の活躍は不可欠だ」
こう力を込めるのは、大和証券グループ本社で常務執行役 CHO(最高健康責任者)を務める望月篤氏である。同社は2008年度から社員の健康増進のための本格的な取り組み、いわゆる「健康経営」を開始。日本の労働人口が減少する中で新たな人材確保は難しくなるため、今いる社員により長く、生き生きと働き続けてもらうことが企業の事業継続にとって必要だから、というのが背景にある。
現在、同社グループ全体で社員数は約1万6200人、平均年齢が42.1歳。これらすべての社員に対して健康推進のためのさまざまな施策を講じている。それによって例えば40〜60代の肥満者の割合が減少するなど、一定の成果が生まれている。
08年度に健康経営をスタートしたきっかけは、国による特定保健指導(メタボ指導)だった。当時の社員のレセプト(診療報酬明細書)データを調べたところ、1位が高血圧性疾患、2位が糖尿病、3位が腎不全と、上位3疾患が生活習慣病だった。さらに細かく分析してみると、社員の37.8%が生活習慣病リスクを持っていることが分かった。
ところが、生活習慣病のリスクがあっても、多くの場合、体が痛いなど具体的な症状が表れるようなものではないので、ほとんどの社員は保健指導や受診勧奨を放置していた。「08年度の定期健診結果で、病院での受診が必要とされた社員のうち、受診率はわずか2割弱だった」と望月氏は振り返る。
そこで導入したのが「イエローペーパー制度」だ。これは定期健診で産業医が定めた要医療・要精密検査と判定された社員に送付する用紙で、これを受け取った者は、2週間以内に医療機関を受診して医師の意見を記入してもらい、会社に提出することを義務付けた。受診に強制力をもたせたことで、導入した09年度は受診率が50.5%に、16年度には87.8%にまで上昇した。「社員の理解度を深め、受診率100%を目指す」と望月氏は話す。
関連記事
- 豊田章男社長がレースは「人を鍛える」という真意
自動車メーカーのレース活動をどう考えるだろうか? 結局のところ道楽ではないか? あるいは、せいぜい広告宣伝。恐らく多くの人はそう思っているはずだ。ところが、トヨタ自動車の場合、これが深謀遠慮に富んだ「働き方改革」の推進システムなのだ。その並外れたユニークな手法を明らかにしたい。 - 郊外で激化する「ママ人材」獲得競争 人手不足対策に大和ハウスが“次の一手”
深刻な人手不足から、関東圏の郊外では「ママ人材」の奪い合いが起きている。テナント企業が主婦層を採用しやすくするために、大和ハウス工業が仕掛けた“次の一手”とは――。 - ファンケルの「アクティブシニア社員」は会社に何をもたらすのか?
労働人口が減少する日本において、いち早くシニア世代が活躍する場所を作ろうとする企業が出てきている。化粧品と健康食品メーカーのファンケルでは65歳以上の社員が柔軟な勤務体系で働き続けられる「アクティブシニア社員」という制度を打ち出した。そこで活躍する社員に実際の話を聞いた。 - スノーピークの社員がテントの中で会議する意味
新潟にある約5万坪のキャンプ場に本社オフィスを併設するスノーピーク。テントの中、あるいは焚き火を囲んでミーティングを行うような同社の働き方が今注目されていて、既に取り入れている企業も出てきているのだ。 - コニカミノルタ常務を直撃 「副業解禁に踏み切った理由」
コニカミノルタが「副業解禁」に踏み切った背景と今後の目指す姿について、常務執行役の若島司氏に話を聞いた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.