「65歳定年制」導入から4年 オリックスのシニア社員は活躍しているのか:妻に怒られて定年延ばす人も(2/2 ページ)
他社に先駆けて「65歳定年制度」を導入してから4年がたったオリックス。制度の利用者は活躍しているのか。「HR EXPO」のセミナーで、グループ人事・総務本部 副本部長の直井厚郎氏が実態を明かした。
定年を延ばした人が活躍 “遅咲き”のケースも
まさかの事情で定年を延ばす社員が増え、直井氏は「そもそもこの制度は、当時70代半ばだった宮内義彦元社長(現シニア・チェアマン)に『60代は若い。もっと活躍させる制度を作ってくれ』と頼まれたことを機にスタートしたのだが、主体的に選んでもらうのは難しいようだ」と嘆く。
だが、定年の延長を決めた経緯はどうあれ、現場では、この制度の利用者が成果を出すケースが増えているという。
「待遇を抑えたことで、定年を延ばした社員のパフォーマンスは落ちるかと想定していたが、実際は多くの人が以前と変わらない仕事ぶりを発揮してくれている」
直井氏によると、特に活躍しやすい人材は「ITリテラシーを含めた実務能力が高い人」。59歳までは「言われたことはコツコツやるけど、物足りない」と評価されていた人が、地道な努力が実を結び、周囲から「立派な仕事ぶりだ」と称賛されるようになった“遅咲き”のケースもあるという。
60歳以上の社員を対象としたアンケートでは、「経験や能力を生かせる」「やりがいを感じる」「職場の活力があふれている」「仕事と家庭生活のバランスがうまく取れている」「誇りを持って働ける」――といった項目が導入前から上昇し、充実度がうかがえる結果が得られているという。
悩みながら一歩ずつ進む
ただ、パフォーマンスが出せない社員も一定数存在するほか、アンケートでは賃金や労働条件に対する満足度が下がるなどの課題も出ている。「早期から導入した反動で、(定年の延長に対する)特別感がなくなってしまったのかもしれない」という。
課題の解消に向けて、今後はインセンティブを設けるなど処遇を改善して活躍を引き出す案も検討中。定年前の社員が50歳以降のキャリアプランを人事と共に考え、強みや志向を再確認する機会も増やしていくという。
「会社ではなく、仕事そのものにロイヤリティー(忠誠心)を持ってもらい、より多くの人にいい仕事をしてもらうのが人事の仕事。今後も悩みながら一歩ずつ進んでいきたい」と直井氏は力を込めた。
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