「褒め言葉」はいらない 上司のこんな行動が部下を“前向き”にする!:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(2/4 ページ)
「褒め合い」の効果が注目されていますが、実践しようとしてもうまくいかないのはなぜでしょうか。企業トップを務めた方が教えてくれた「社員は全員、立派な社会人」という言葉にそのヒントが隠されています。【更新】
あの「パワハラ暴言」を擁護した人たち
まずはこちらのお話から。これまで何人もの方たちがこんなことを言っていました。
「昔は毎日がパワハラですよ。でもね、僕はその上司のことが嫌いじゃなかった。どちらかと言えば、好きだった。だって、部下の教育に熱が入るあまり、ついついキツイこと言ったり、足が出るなんてことは誰にだってあるでしょ?
もちろんこんなご時世ですから、暴力はダメですよ。そうそう、絶対にダメ。でもね、愛のムチは時には必要だと思うんです。ところが最近は、なんだかんだと細かいことばかりで。ホント生きづらい世の中になりました。余裕がなくなったってことかね〜」
こうやって「愛のムチ」という便利な言葉で、昔の理不尽な上司部下関係を美化する意見を聞かされてきました。いまだにフィールドワークのインタビュー中や宴席などで耳にするので、「本音を言えば……」という方は想像以上に多いと思います。
そして、彼らは「あれはアウトでしょ?」という暴言でさえ容認し、「暴言は言わせる方にも問題がある」と、今度は「部下の問題」にすり替えることを度々します。
思い起こせば“あの時”もそうでした。
昨年、連日連夜ワイドショーが取り上げた、「バカかお前は! 死ね! 生きている価値ないだろう」(by 豊田真由子前議員)発言です。
どこをどう切り取っても、「アウト〜〜〜っ!!」というこの暴言に対し、一部の人たちは「録音するのってどうよ?」と運転手(秘書)の行為を非難し、これが“運転手のミス”のあとのやりとりだったことが報じられると、「運転手がミスしたからでしょ? 指導とパワハラの境界線って難しいよね〜」と顔をしかめました。
細田博之自民党総務会長(当時)に至っては「高速道路の逆走が原因」とわざわざ説明し、豊田氏を擁護。河村建夫元官房長官が「あんな男の代議士なんかいっぱいいる。(豊田代議士を責めるのは)かわいそうだ」と述べた時も(発言は撤回)、「政治家では珍しいことではない」と、暴言を“擁護”する政治評論家もいました。
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