「褒め言葉」はいらない 上司のこんな行動が部下を“前向き”にする!:河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)
「褒め合い」の効果が注目されていますが、実践しようとしてもうまくいかないのはなぜでしょうか。企業トップを務めた方が教えてくれた「社員は全員、立派な社会人」という言葉にそのヒントが隠されています。【更新】
「社員は全員、立派な社会人」
いったいなぜ、彼らはこういった「暴言・暴行」に理解を示し、「心理的な抑圧」が人を成長させるなどとのたまうのでしょう?
申し訳ないけど、私には全く理解不能なのです。だって、そういう方たちが懐かしむ昭和の時代にも、理不尽な扱いに悩み、誰に話すこともできず、ひたすら耐え、なかには耐えきれずに会社をひっそりと辞めていった人だっていたかもしれないわけです。
そもそも社員は、会社に労働力は提供しても、人格を預けたわけじゃない。「上司と部下」「リーダーとフォロワー」という関係にあったとしても、誰もが例外なく労働者である以前に人間です。新人であれ、3年目の社員であれ、役職もないヒラの30代社員であれ、「社員は全員、立派な社会人」です。
相手への「敬意」がない。そうです。愛のムチを肯定する人たちは自分の気持ちだけを優先し 、相手の「心」を忘れているのです。
実は「社員は全員、立派な社会人」という言葉は、以前、日本を代表する財界人であり、大企業のトップを務めた方がおっしゃっていたことです。自分が今のポジションに上り詰められたのも、「社員は全員、立派な社会人」と言ってくれた上司がいたからだ、と。
つまり、上司が「敬意を持って接すること」が部下のやる気と、「しっかりやろう」という当事者意識を喚起させたのです。
新人の部下であれ、30代のベテラン部下であれ、彼らは「部下」であると同時に、1人の人間です。「1人の人間として、部下と接してみる」のは、想像以上に難しいことかもしれません。でも、人間には例外なく「認めてほしい」という気持ちがあります。
敬意を持って接することは、「あなたを認めています」というメッセージと同意です。いかなる言葉を上司がかけようとも、その意味を決めるのは受け手の「部下」です。受け手は、送り手が「自分をどう思っているか?」ということを考えながら、相手の言葉の意味を決めます。
「キミ、すごいじゃないか!」という褒め言葉でも、「この上司は僕のことをコマとしてしか見てない」と感じている部下は、「なんだよ。突然。なんかまた変な仕事、降ってくるんじゃないのか」などと警戒するでしょうし、「この上司は僕のことをばかにしてる」と感じている部下は、「また、バカにしやがって。これくらいいつもやってることだよ」と逆ギレするかもしれないのです。
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