ソーシャルレンディングの不正問題に出資者はどう対峙すべきか?:“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)
ソーシャルレンディング最大手のmaneoマーケットで、融資先企業による資金不正流用問題が発生した。融資業務である以上、こうした不正が起きるリスクを100%回避することはできないが、出資者はどのような点に注意すればよいのだろうか?
結局のところリスクは金利との引き換え
銀行の場合、銀行法や独占禁止法などによって事業会社との兼業や事業会社への出資は制限されており、原則として融資先企業とのグループ関係は存在しない。だが、ソーシャルレンディングは、あくまで融資を行うファンドを運営しているだけであり、融資を受ける会社との資本関係の有無や人的関係については、当事者が積極的に開示しない限り知る方法はない。
世の中には、金融機関によるガチガチの融資スキームにそぐわない案件も存在する。だからこそ、ソーシャルレンディングというプラットフォームに活動の余地がある。だが、ソーシャルレンディングは、柔軟な運用ができる反面、銀行が担保していたような完璧な透明性は期待できない。最悪の場合、お金を集める事業者とプラットフォームの事業者が結託する危険性もゼロではないだろう。
融資というビジネスは、うまくマネジメントしないと、株式投資よりもさらに高いリスクを抱えてしまう。融資によって得られるのはわずか数%、多くても10%程度の利子だが、融資先の会社が破たんすれば、元本をすべて失う可能性がある。
そのため銀行は、徹底的に担保価値にこだわり、貸付債権の保全に血眼になってきた。担保にしか着目しない銀行の姿勢は時に世間から批判されるが、そもそも論として「カネ貸し」というのはそこまでシビアにならなければ成立しないビジネスなのである。
maneoに代表されるソーシャルレンディングにおいて高い金利が設定されているということは、こうしたリスクを引き受けた対価であるということを忘れてはならないだろう。
加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)
仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。
野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。
著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。
関連記事
- 働き方改革関連法の成立で仕事はどう変わるか?
働き方改革関連法が可決・成立した。国会審議では「高度プロフェッショナル制度(高プロ制度)」の是非が主な争点となったが、同法案がカバーする範囲はもっと広い。法案の概要と施行後にどのような影響が及ぶのかについて考察する。 - スルガ銀行のシェアハウス融資から見えてくる銀行の「ホンネ」
スルガ銀行による、シェアハウス向け融資が波紋を呼んでいる。不動産投資が一種のブームとなっていたが、カネを借りる側と貸す側の意識には天と地ほどの違いがある。スルガ銀行の融資問題を通じて、銀行のホンネを探った。 - なぜメルカリはホワイトな労働環境をつくれるのか?
メルカリの福利厚生がホワイトすぎると話題だ。多くの日本企業は働き方改革を実践するため、残業時間の規制などに躍起になるが、根本的な誤解も多い。メルカリの取り組みを知ることで働き方改革の本質が見えてくるはずだ。 - 転職が増えないと、社会のAI化は進まない?
AI化が進むと人間の仕事の多くが失われるという話は社会の共通認識となりつつある。しかし、現在の労働市場のままでは、AI化そのものがスムーズに進まない可能性もあるのだ。 - 銀行マンが転職できるか真面目に考えてみた
メガバンクの大規模な人員削減計画が大きな話題となっている。そこで注目されるのが銀行マンの去就だが、彼らが他業種に問題なく転職できるのか考察してみた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.