地方が生き残るためには? 四万十ドラマ社長が語る地域おこし成否の鍵:田舎の価値(3/4 ページ)
「日本最後の清流」と言われる四万十川。この流域に、地域おこしで有名な会社がある。「四万十川に負担をかけないものづくり」をコンセプトに掲げ、地域に根ざした事業展開をしている四万十ドラマだ。
四万十栗の再生に向けて
四万十ドラマで取り組んできたことの一つが「四万十栗再生プロジェクト」だ。従来から高知は栗の名産地として有名。その代表格である四万十栗は、通常の栗よりも大粒の25グラムで、糖度も高いのが特徴である。そのため全国各地の菓子メーカーなどから原材料としての引き合いが強かった。ピーク時の収穫量は年間800トンを超えていたが、上述したシイタケと同じく、栗も単価が下落したことや、生産者の高齢化による後継者不足などによって収穫量は激減した。数年前には18トンにまで落ち込んだのである。
再び収穫量を高めるために、四万十ドラマでは栗の植樹に加えて、剪定(せんてい)にも力を入れた。これに関しては、畦地さんがたまたま知り合った岐阜の菓子屋である「恵那川上屋」の技術指導によるところが大きかった。恵那は栗きんとんの発祥の地であり、同社は菓子屋であると同時に農業法人の顔も持つ。そのため栗の生産に関して高い技術があった。3年前に恵那川上屋の技術者が高知に移住して、その技術を四万十栗にも適用した。その結果、2017年は45トンまで回復、今年は60トンにまで収穫量を増やしたい考えだ。
もう一つ、四万十ドラマの事業成長の転機となったのが「道の駅 四万十とおわ」である。「売り場ができたことで、地域の商品が消費者に直接売れるようになりました。その結果、商品開発もどんどんと進み、10年間で売上高5億円ほどの規模にまでなりました」と畦地さんは話す。
四万十ドラマによる道の駅の指定管理事業は18年3月末で終了したが、畦地さんはそれに代わる新しい直営店を立ち上げる計画だ。その資金集めにはクラウドファンディングを活用し、計画を超える約1100万円を集めたのである。
道の駅は公的な施設なので、自社のものだけでなく、その他大勢の生産者の商品を扱わないといけないルールがあった。新しい店では、地域のものを扱うこと自体は変わらないが、自分たちが売りたい商品だけに絞り、その商品の開発ストーリーなどを消費者に丁寧に説明するなどして、より専門性を高めた形で販売していきたいという。
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