東京モーターショー再生への提案:池田直渡「週刊モータージャーナル」(2/4 ページ)
東京モーターショーの地盤沈下はもはや誰の目にも明らかだ。来場者や出展者の数はどんどん減っている。一体どうすればいいのか?
改革の提案
さて、これらの数字を見て明らかなように、TMSのプレゼンスは急落しており、今までのやり方を踏襲するのは自殺行為だと言うことだ。
具体的に言えば、これまでのように絵空事のコンセプトカーを何億円もかけて並べても、もうお客さんは反応しない。一部旧来からのクルマ好きはそれを大事にしろと強弁するが、そういう人たちの喜ぶショーを続けた結果が今の状態である。数字のエビデンスを見れば明確で、それを続けていけばTMSはやがてなくなることになるだろう。変わらなければ死を待つのみなのだ。
暗い現実ばかり見ても仕方ないので、TMSにビジネスの新しい芽について考えていきたい。
ここ数回のショーで明らかに目を引くのは、アジアからの来客だ。ご存知の通り、インドやASEANを中心とする西アジア各国でマーケットを寡占しているのは日本のクルマであり、彼らにとって日本車は高い技術に裏打ちされたスーパープロダクツである。仮にアジア各国のジャーナリストを招聘して、それらのクルマを作ったエンジニアによってクルマのコンセプトや技術についての濃密なコミュニケーションを取ったらどういうことになるだろうか? 彼らはこぞってTMSに来日し、そこで取材した結果はアジア各国の媒体をにぎわすことになるだろう。
モノよりコトという考え方が優位になって久しい今、いつまでも展示物を見せるだけで勝負しようと言うのは大きな間違いであり、情報こそが真の武器になるはずだ。クルマを作っている人たちと直接話し、意見交換ができるとすれば、それは今後のアジア戦略に大きな価値を持つことは明らかだ。
もちろんエンジニアの見識を広げることにも大いに役に立つ。そういうコミュニケーションの場があることを知った海外メーカーがTMSを放っておくわけがない。彼らはこぞってTMSに復帰してくるだろう。
通訳や翻訳、宿の手配やプレスルームの規模拡大や内容の充実などやるべき仕事は大幅に増えるだろうが、それだけの価値は明らかにある。何度も言うが、何よりやらなければ死ぬのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
豊田章男自工会新会長吠える!
「この事実をしっかり報道してください」――。2018年5月に日本自動車工業会の会長に就任したトヨタ自動車の豊田章男社長が、最重要課題として強く訴えたのが自動車関連諸税の問題だ。
クルマは本当に高くなったのか?
最近のクルマは高いという声をよく耳にする。確かに価格だけを見るとその通りだと思う一方で、その背景には複雑な事情があることもぜひ主張しておきたい。
グーグル&Uberつぶしのトヨタ・タクシー
現在開催中の「第45回 東京モーターショー」。その見どころについて業界関係者から何度も聞かれたが、その説明が面倒だった。自動運転車や固体電池のクルマとかなら「ああそうですか」で終わるのだが、今回はタクシーなのだ。
自動車デザインの「カッコいい」より大事なもの
自動車のデザインの話になると、すぐにカッコいい、カッコ悪いという点がフォーカスされる。商品としては大事なことだが、インダストリアルデザインにおいて重要なのはほかにある。
自動車産業の過去・現在・未来
トヨタ自動車の豊田章男社長は「自動車産業はどこの国だって国策事業です」と言った。自動車産業は過去100年、いつだって資本主義を進めて国民を豊かにしてきた。今回はそんな話を書いてみたいと思う。
