「大阪王将」に後れを取っていた「餃子の王将」の業績が復活したワケ:長浜淳之介のトレンドアンテナ(4/6 ページ)
「餃子の王将」を運営する王将フードサービスが復活しつつある。女性向けの新業態店や安価で量を減らしたメニュー開発が奏功したが、本質的な理由はほかにもあるという。どのような戦略を打ち出しているのだろうか。
ちょい飲みにも対応
女性向けの業態開発だけでなく、14年から取り組んでいるのが分量を減らして安価に提供する「ジャストサイズ」の提案だ。
ボリュームたっぷりで提供される野性味が餃子の王将の魅力で、2〜3つの料理を組み合わせたセットもあったが、もっと自由に選びたいお客も多かったので、その声に応えたのだ。
ジャストサイズは、従来の店舗でもお酒のおつまみとして求められており、300円程度で「麻婆豆腐」「ニラレバ炒め」「酢豚」といったおなじみの中華料理が楽しめる。ジャストサイズなら、餃子は3個で130円、ビールは180円であり、物足りなくてもう1品追加したい時にも重宝されている。
お酒のおつまみとして、100〜200円台でキムチ、枝豆などクイックで提供されるメニューが用意されている店も多く、ジャストサイズと合わせて、ちょい飲みできる低価格の中華居酒屋としても機能するようになった。
このように、新しいギョーザブームの担い手である女性ファンとギョーザ居酒屋への対応策も着々と打ってきた。
業績回復の決め手は「王将大学」
18年の第1四半期では直営既存店の売上高が前年割れしていたものの、7月以降は10月を除いて全ての月で前年を上回っている。同社の広報によると、業績回復の決め手となったのは、17年7月の組織変更で新設された店舗社員の教育を担う「王将大学」の存在が大きいという。
王将大学では10人前後の店長・副店長を順次招集し、日帰りや宿泊を伴う研修を行っている。研修では、店舗管理や人材管理で指導者・管理者はいかにあるべきかを学び、ノウハウを共有することで、切磋琢磨する社風の醸成に成功している。
特に力を入れているのは、飲食業の基本となるQSC(品質・サービス・清潔さ)の徹底である。例えば餃子の王将の店舗は全店共通のグランドメニューやキャンペーンメニューの他に、店によって独自のメニューを設定できる。この独自メニューに関する成功事例の共有が、大きな知的財産になる。創業50周年を機に、経営陣はもう一度原点に帰ろうと社員に呼び掛けている。
調理レベルの向上を目的とした「王将調理道場」も開設。メニューの調理法を、もう一度確認し合う機会となっており、こちらは店長が出席している。
このような従業員教育に、延べ1200人が参加した。
一方で、従業員満足度の向上にも取り組んでおり、週休2日制、有給消化の浸透、3年連続の給料ベースアップなど、労働環境の改善を推進している。これにより、退職率は業界最低水準に達したという。
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