45万人が中国に数千億円の日本製品を転売 謎の在日バイヤーを追う:SNS通じ中国人の信頼獲得(3/4 ページ)
中国市場に数千億円もの日本製品を売り込む中国系バイヤーに迫った。日本に居ながらSNSを駆使し美容用品などを販売。日本企業が今後活用できるかが鍵。
自国製品への不信感が根底に
イベントに参加した日本人の夫を持つ横浜在住の中国系の女性(49)は、出展していた女性向けタイツやフットカバーのシリーズを見て「これは中国でも知名度が高い」と興奮する。「ソーシャルバイヤーはちょっとしかやっていないのよ」と謙遜するが、月に30〜80万円稼ぐ。
彼女は微信上で約2000人の顧客とつながっている。主にスキンケアやベビー用品、健康食品を手掛け、たまにカメラや腕時計といった高額商品も売るという。
会場で彼女たちソーシャルバイヤーを見ていて気になったのが、頻繁にスマートフォンやタブレットをいじり写真や動画を撮影している点だ。ブースでは陳列される商品を熱心に撮り、企業がモニターで商品説明の動画を流せば一斉に録画する。微信のチャットで誰かとやりとりしたり画像を送っている姿もよく目にした。トレンドExpressの担当者に聞くと、SNSでつながっている顧客にリアルタイムで商談会や商品の情報を送っているのだという。
出展企業もバイヤーの熱狂ぶりに目を丸くする。女性向け衣類メーカーの社員は「4年ほど前からバイヤーがうちの商品をよく買うようになった。1人で年間8000万円買っていった人もいる」と打ち明ける。今まで中国に社員が出張したりして商品をアピールしたことはない。「誰がうちの商品を買おうがうちは関係ない」と言い切るが、会社全体の売り上げの約3割はこれらバイヤーによるものだという。
小売店やECサイトでメーカーや代理店から直接商品を買うのが当たり前な日本人にとっては、ソーシャルバイヤーをわざわざ通して日本製品を手に入れようとする中国人の購入方法はちょっと奇妙に映る。その背景について、トレンドExpressの担当者は「中国で最も人気な商品は『海外製品を輸入した物』」と指摘する。
中国ではいろいろなジャンルの商品で偽物が今も多く流通している。加えてそもそも自国の工場で生産された製品に対する信頼性が、日本や欧米に比べて低い傾向にあるという。「家電は品質向上で信頼度も上がったが、直接口に入れる食品や体に付ける美容用品、乳児に使うベビー用品では不信感が残っている」(トレンドExpressの担当者)。これらのジャンルで日本製品は世界的にも評価が高く、中国で人気が集中しているという。
関連記事
- オタクグッズ、海を越えて「おつかい」します
海外のオタクがほしいアニメやゲームのグッズをリクエストし、日本のユーザーが買ってきて取引するサイトが登場した。日本のオタクグッズは海外で買えず偽物も流通していることが背景にある。 - コンビニおにぎり、ひそかに“バイリンガル”になった深いワケ
コンビニ各社が訪日客向けにおにぎりのパッケージのデザインを変更している。具材の英語表記やイメージ写真を付けて中身を想像しやすくした。 - 大災害時に訪日客をどう守るか 西日本豪雨・大阪府北部地震で考える
豪雨や地震など大災害時、訪日客をどう守るのかインバウンド情報の専門家に聞いた。言葉の壁が浮上するほか、保険未加入の人の多さやデマの危険性も問題に。 - ファミマがエアビーとタッグ、訪日客に照準
ファミリーマートがエアビーアンドビーと提携した。民泊を利用する訪日客が宿泊先の鍵を店内で受け渡しできるようにして、インバウンド需要を取り込む。 - 日本の料理学校で外国人が「和食」より「洋菓子」を学ぶ深い訳
料理の名門「辻調」の製菓学校で洋菓子作りを学びに留学する外国人が増えている。日本の高い技術やビジネスモデルの習得が目的だが、法規制のため卒業後日本の洋菓子店で実務経験を積めないのが課題。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.