北海道地震でデマ拡散が止まらない真のメカニズム:「広範囲で断水」「もうすぐ大地震が」(3/3 ページ)
北海道地震で断水や携帯電話の不通といったデマがSNS上で流れている。被災時は心理的にデマを信じやすい上、lineでの友人間のやりとりで尾ひれが付きTwitterで拡散されるようだ。
“伝言ゲーム”で尾ひれが付く
実際、今回の北海道地震のデマの発生プロセスとしてひそかに注目されているのが、LINE上の個人間での情報のやりとりだ。村上さんらがTwitterでデマを発信しているとみられる人物の情報の入手元を調査したところ、LINEで友人から事前に聞いていたというケースが多くみられた。
「閉じられたSNSであるLINE内で友人や身内と悪気無くやりとりしていた情報が、“伝言ゲーム”のようにだんだんと『NTTの知り合いから聞いたんだけれど〜』などと尾ひれが付いていったのではないか」(村上さん)。
こうして大きくなったデマを誰かがオープンな場であるTwitterに流すことで爆発的に拡散した、とみる。村上さんによると、2016年の熊本地震の際にはこうしたLINE発のデマの広まり方はほとんどみられず、18年の西日本豪雨や大阪府北部地震で確認され始めた新しい拡散方法だという。
橋元教授も「人は他人に話を伝える際、自分の情報の信ぴょう性を無意識に高めようとして勝手に『信頼ある情報源』をいつの間にか付け加えてしまう傾向にある」と指摘する。今回ならNTT、行政、自衛隊といった信頼のおけそうな団体がそれにあたる。「たとえメッセージにこういった情報の出どころの文言があっても安易に信用しないで」(橋元教授)。
橋元教授は流言の防止策についても「生存に関わる情報については極力うのみにせず拡散もするべきではない。マスメディアや自治体、(NTTや水道局など)ライフラインを運営する会社のサイトに直にアクセスするべき」と話す。
外国人標的にしたデマの可能性も
平時にはまず信じる人のいない荒唐無稽なデマがどうしても飛び交う被災地。今後広まるデマについて橋元教授は、外国人に対する恐怖をまき散らす内容が出回る可能性があると指摘する。「災害時に人は日頃抱えている敵意を発散しがちになる。普段から差別傾向が強い人だけでなく、一般人もひそかに持っていた差別意識を(自分の中で)正当化してしまい、デマを広めてしまう可能性がある」。
実際、西日本豪雨では「被災地の家屋に外国人が泥棒に入った」といった内容のデマがTwitterで流れた。今回被災した北海道は中国人を中心に絶大な人気を誇る観光地で、実際に多くの訪日客が地震に遭遇した。流言に自分自身が惑わされないため、また罪のない外国人が被害に遭わないためにも、デマに冷静に対処する知識の周知が求められている。
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