10年間宣伝ゼロのマーガリン 売り上げが突如6倍になった真の理由:メーカーも「なぜ売れた」と困惑(3/4 ページ)
たらこ入りマーガリンが発売10年目に宣伝無しでメーカーも困惑する謎のヒット。Twitterがきっかけだが背景にはそもそもSNSで興味をひきやすい商品の魅力があった。
もともとSNSで興味かき立てる商品内容
謎を解くため、SNSの分析やマーケティングを手掛けるワイズワークスプロジェクト(東京都中央区)の担当者に、この商品がSNSでどのようにキーワードとして浮上したのか解析してもらった。
担当者によると、「たらこスプレッド」というキーワードがTwitter上で最初に急激に浮上したのは17年5月21日以降のタイミングだった。ちょうどこの日、あるネットメディアがこの商品の紹介記事をアップしていた。「この記事が引き金となった可能性が高い」(担当者)。
その後、SNSで話題になっているのに気付いたとみられる別のネットメディアも追随して記事を掲載していった。マリンフード自身もその後リリース文を出してメディアにPRした。最初の記事タイトルにあった「罪深き調味料」という文言もSNS上で関心を呼び、拡散していったとワイズワークスプロジェクトの担当者はみる。
しかし、そこでもわずかな疑問が残る。最初にたらこスプレッドを紹介したメディアはTwitterの公式アカウントのフォロワー数が10万強と、決して零細ではない。ただフォロワー全員が記事を読んで商品を買うわけではなく、競合する類似サイトも多く存在する。大手紙やテレビに比べて消費者への影響力が高いとも言えない。
記事内容も商品の食べ方を紹介したシンプルなもので、サイト内では他の商品も同じように紹介されている。紹介されたすべての商品がたらこスプレッドのような爆発的ヒットを遂げたとは考えにくい。売れたのはなぜこの商品だったのか。
ワイズワークスプロジェクトの担当者は「そもそもたらこスプレッドは消費者の興味をかき立てる、SNSと相性のいい商品」と指摘する。ピンクという奇抜な色に加え、たらこという誰もが想像しやすい味付け。「罪深い」「神の味」といった“バズワード”をメディアが広めたこともTwitterでの話題作りにつながったいう。
400円台という手に取りやすさや、簡単にいろいろなレシピを試せる汎用性の高さも比較的若く好奇心旺盛なSNSユーザーの興味を引いたとみる。ただ「ネットメディアが紹介するまではネット上で『眠っていた』無名の商品だった」(担当者)。
担当者によると、ネット上で知られていなかった商品がSNSで誰かに紹介されることで唐突に注目を浴びるケースは最近多いという。例えばセブン‐イレブンの「ホットビスケット」。セブン側も特にSNS上で変わったPRをしていなかったが、2017年秋ごろに一般人が写真と簡単なコメントをTwitterにアップしたのがきっかけでブレークした。
関連記事
- 胸の大きい女性が胸を張って着られる服を 27歳女性起業家の挑戦
27歳女性が起業した胸の大きな女性向けの洋服ブランドが急成長している。ユーザーの要望をきめ細かく商品に反映、Twitter上で同じ悩みを持つ女性の共感を呼びヒットした。 - じぶん銀行が「ガチで萌える」2次元美少女の行員を作りこむ深い訳
じぶん銀行がカードローンPRのため2次元美少女行員「小鳥遊つぐみ」を起用。Twitterでつぶやく「中の人」も若手女子行員にしてリアルさを追求。マスCMでなく若い男性層に特に刺さる戦略を取る。 - ブルーハワイも真っ青 「超」青色のドレッシング発売
ケンコーマヨネーズが真っ青な色の業務用ドレッシングを発売する。青色は食欲があまりわかない色ともされるが「インスタ映え」を意識してインパクトを狙った。 - Twitterで次に何が炎上するか当たる!? SNS上の話題を「未来予測」
ネット情報の分析会社が「SNS上で何が今後、話題になるか」の研究を始めた。SNSのユーザーがある情報について「共有・拡散したか」というデータを元に分析、企業の炎上対策にもつなげる。 - 北海道地震でデマ拡散が止まらない真のメカニズム
北海道地震で断水や携帯電話の不通といったデマがSNS上で流れている。被災時は心理的にデマを信じやすい上、lineでの友人間のやりとりで尾ひれが付きTwitterで拡散されるようだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.