10年間宣伝ゼロのマーガリン 売り上げが突如6倍になった真の理由:メーカーも「なぜ売れた」と困惑(2/4 ページ)
たらこ入りマーガリンが発売10年目に宣伝無しでメーカーも困惑する謎のヒット。Twitterがきっかけだが背景にはそもそもSNSで興味をひきやすい商品の魅力があった。
6月は売り上げ6倍、17年全体でも2倍に
マリンフードが社を挙げて開発したたらこスプレッド。背景にはマーガリンが普通の方法ではなかなか売れない業界事情がある。
家庭用マーガリンは含まれているトランス脂肪酸についてWHO(世界保健機関)が健康リスクを指摘していることから市場が縮小している。日本マーガリン工業会の調査によると、2017年の国内生産量は40138トンと前年比3.9%減。5年以上右肩下がりが続く。
しかも一般に流通する家庭用マーガリンは明治や雪印メグミルクといった大手メーカーの物が多い。かたやマリンフードの会社全体の売上高は約200億円。縮小するマーガリン市場で中堅メーカーが存在感を出すため、商品の独自性を追求した。
このたらこスプレッド、社内では「色物マーガリン」と呼ばれる変わり種シリーズの1つ。「白物」と呼んでいる大手メーカーの一般的な商品との差別化を狙い、ほかにもニンニク入りの「ガーリックマーガリン」などを出した。発売後はCMや特筆するような販促をかけることもなかったが、シリーズ中2番手の売り上げを維持する地味な定番商品となっていた。
異変が起きたのは発売10年目の2017年6月。突如、前年同月比で約6倍の売り上げを記録した。川村さんたちは「何もやっていないのになぜこんなに出荷が増えたのか」と絶句した。しかも一瞬のブームに終わらず、17年全体の売上高は前年比約2倍。18年も1.6倍の勢いで上昇中という。
川村さんがヒットのきっかけとして挙げるのが、同じタイミングでコーヒーや食品を扱う小売店、カルディコーヒーファームへの出荷を増やした点だ。比較的流行に敏感なファンの多いこのチェーンの店頭に置かれたことで認知度が高まったとみる。
さらに17年6月以降、SNS上でたらこスプレッドに関する投稿が急増した点も大きいという。「『とても罪深い食べ物』などとTwitterでつぶやかれるようになった。Instagramでもうちのレシピを再現した料理写真が投稿されている」(川村さん)。ちなみに「罪深い」という表現は、イクラなどの魚卵が痛風を想起させるからではないかとみる。
SNSが特定の商品に脚光を当ててヒットを生む。いかにも今風の「バズり方」だが疑問が残る。マリンフードは当時、SNS上で何もマーケティング活動をしていなかった。商品が置かれたカルディは人気の小売店だが、コンビニや大手スーパーに比べれば規模は小さい。なぜこれまでほとんど話題に上っていなかったたらこスプレッドが「17年6月」に突如、SNS上で急激に人々の関心を呼んだのか。
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