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“変態セブン”が生まれた背景に、地獄のドミナント戦略スピン経済の歩き方(3/6 ページ)

栃木県内にあるセブン-イレブンの店舗が話題になっている。オーナー店長が破天荒すぎる言動を繰り返していて、その動画が公開されたのだ。この問題は「オーナーとエリアマネージャーを叩いて終了」で終わりそうだが、筆者の窪田氏はちょっと違う見方をしている。それは……。

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終わりの見えない闘いの中で

 そこへ加えてこのドミナント戦略が、オーナーたちにとって恐ろしいのは、ライバルの出店も加速させることだ。商圏を独占しようというセブンの動きを、ライバルもただ指をくわえて見ているわけにはいかない。よく競合コンビニが仲良く並んでいる風景を見かけると思うが、あれはドミナントに「くさび」を打ち込んでいるのだ。

 FC本部からすれば店舗は「陣取りゲーム」の「駒」のようなものなので、どこかでドミナントの動きがあれば、そこへわっと敵味方の「駒」が集められる。結果、光に寄せ集められる虫のように、ライバル店やセブンオーナー仲間が一堂に会して、誰が生き残れるかというコテコテのレッドオーシャンが繰り広げられるというわけだ。

 このような“ドミナント地獄”にハマって、心身ともに疲弊しているセブンオーナーは少なくない。そして、動画での、あの能天気そうな立ち振る舞いとまったく結びつかないが、変態セブンも人知れずこの地獄の中でおびえ、悩んでいた可能性があるのだ。

 先ほど、件の店舗の2キロ強圏内には10のセブンがひしめき合っていると述べたが、実はここまで増えてきたのはこの数年のことだ。まず16年2月、直線で700メートルほどの場所に新規店舗がオープン。ほどなく、変態セブンの店舗もリニューアルオープン。翌17年8月には直線でおよそ1.7キロのところにも新規店舗ができている。

 このようにセブンが商圏を圧倒しようという動きがあれば、ライバルも当然動く。昨年5月には店からおよそ200メートルのところにファミリーマートが出店。今年1月には約500メートル離れたロケーションにローソンがオープンしている。

 つまり、変態セブンは2年半前くらいから、セブンとライバルが織りなす「ドミナント地獄の真っ只中に放り込まれていた」状況だったのだ。

 コンビニオーナーが最も恐れるのは、隣近所にコンビニがオープンすることだというのは言うまでもない。しかも、ライバルだけではなく、「仲間」まで自分のテリトリーを侵しにやって来るのだ。変態セブンが、人知れず孤独と恐怖に襲われていたのは間違いない。

 だから、チャックから指を出したり、わいせつな言葉を投げかけたりするのは大目に見ろ、などと言いたい訳ではない。この終わりの見えない闘いの中で、オーナー店長は「モラル」や「善悪の判断」が壊れてしまったのではないか、という可能性を申し上げているのだ。

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